あの日から1年。
ドイツで最初に新型コロナウイルスの患者が報告されたのは、昨年(2020年)の1月27日でした。その時には予想すらできなかった暮らしの中に、現在、身を置いている私たち。光を求めて長いトンネルを進む日々が続いています。
ロックダウンはバレンタインまで延長
昨秋以降、部分的な制限措置に留める「ソフト」ロックダウンで経済活動と感染防止の両立を図っていたドイツ。しかし、感染の勢いは止められず、1日の新規感染者数が3万人を超えるほどに拡大。12月中旬には制限措置をさらに強化したハードロックダウンに踏み切りました。
そして年が明けた2021年。「ハード」ロックダウンによって新規感染者数が減少に転じつつも、ドイツ国内では変異種の感染報告が相次ぐことに。当初は1月10日までだった制限措置が1月末まで延長されたかと思ったら、すぐに2月14日までの延長が決定。12月末から接種が始まったワクチンの供給量には限りがあり、短期での状況の改善は見込めないことに加え、変異種への懸念が高いことなどを受け、医療用マスクの着用義務などの追加措置を加えたさらなる強化策となりました。
ハードロックダウンの延長を繰り返し、さらに制限が強化され、一体どこまで続くのか。今の状況を指して、「メガ」ロックダウンなんて表現も飛び交っています。
マスク着用義務、違反すれば2万円の反則金
コロナ禍で初めてとなる医療用マスクの着用義務措置。州によって規定の内容が若干異なりますが、私の住むノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州を例にとってその概要を紹介します。
【医療用マスク着用義務の概要】※ NRW州の場合
◇着用が義務となる場所
・商業施設(食料品店やドラッグストア、ガソリンスタンド、銀行、キオスクなどのすべての店舗)の閉鎖された空間内
・医療機関または類する施設の利用時
・公共交通機関利用時およびその施設内
・教会などにおけるミサその他の宗教行事に参加する場合
◇着用義務対象外の場所
上記以外の閉鎖された公共空間、教育施設、屋外の市場などにおいては、引き続きマスクの着用は必要とされており、医療用マスクもしくは日常用マスクと呼ばれる布製マスクの着用も可能
◇着用除外者
・14歳未満の子供がサイズの関係で医療用マスクを装着できない場合、日常用マスク(布製マスク)の代用が可能
・未就学児はマスク着用義務が免除される
・健康上などの理由によりマスクなどを着用できない場合は着用義務が免除される(医師などの証明書を携行する必要がある)
◇反則金
マスク着用義務に違反した場合、反則金が科される(最大150ユーロ=2万円弱)
参考:在デュッセルドルフ日本国総領事館の配信メールより一部抜粋
医療用マスクとして指定されているのは、日本ではサージカルマスクと呼ばれるOPマスク、そしてマスクの国際規格に適合するFFP2マスクもしくは同等のKN95/N95マスクとのこと。
私は今まで布マスクを日常的に使っていて、医療用マスクには縁のない生活だったので「何を買えばいいの?!」と、慌てて調べたのは言うまでもありません。ネットショップを見る限り、今のところ品薄や価格高騰の心配はなさそうですが、ヨーロッパEN規格のFFP2マスクが20枚入り20~40ユーロ(3000円前後)と決して安くはない買い物。使いまわしできる布マスクと違い、義務が解除されなければ使い捨てである医療用マスクへの出費は増える一方です。友人も「家計への負担が...」とこぼしていました。
現状では、60歳以上の人や特定の持病がある人を対象に、FFP2マスクの無料配布や割引クーポン配布行われています。しかし一方で、失業保険受給者や低所得者などは対象外。彼らへの金銭的支援を求める声は、今回の医療用マスクの義務化によって、いっそう強まっています。
一部の州では、医療用マスクの無料配布や購入用の助成金の支給を独自に決定。ドイツ政府としての対応が待たれています。
現在、1月27日時点での人口10万人あたりの過去1週間の新規感染者数はドイツ全体で101人。ピーク時は200人を超えていたことを考えると、だいぶ下がってきてはいるものの、制限緩和の目安となる50人未満まではまだまだ遠い状態です。
「冬は長く厳しいものなのです」
昨年の大晦日にメルケル首相が発表した談話でのひと言が、今ほど身に染みることはありません。外を歩くと、どこからか鳥のさえずりが聞こえ、道端の街路樹にはふくらみかけたつぼみが。春の訪れはすぐそこまで来ているはずなのに、肌に当たる風はいまだ冷たいままです。(神木桃子)