米国のグーグルやアップル、フェイスブック、アマゾンといった巨大IT企業を規制するための「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」が2021年2月1日施行された。ネット通販やスマートフォンで使うアプリを販売する企業が規制の対象となる。
プラットフォーマーと呼ばれる大企業と取引する中で、弱い立場になりがちな小規模事業者の保護を図る狙いだが、欧州連合(EU)のような厳しい規制を打ち出すものでなく、改善を企業に促すユルい内容だ。その効果に疑問の声もあがっている。
不利になりがちな出店業者を保護
経済産業省が法律の施行に合わせて、政策説明のウェブサイトの「デジタルプラットフォーム」の項目を更新。それによると「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」は、デジタルプラットフォーム提供者のうち、特に規模が大きい巨大企業に対し「取引条件等の情報の開示、運営における公正性確保、運営状況の報告を義務付け、評価・評価結果の公表等の必要な措置を講じる」ものだ。
同法の対象である特定デジタルプラットフォーマーは(1)「前年度の国内流通総額が3000億円以上」のネット通販や、(2)「同2000億円以上」のアプリ販売を行う企業。届出により指定を受ける。米グーグルやアップル、アマゾン、国内では楽天などが対象になる見込みだ。
新法では、特定デジタルプラットフォーム提供者は、取引条件などの情報の開示及び自主的な手続・体制の整備を行い、実施した措置や事業の概要について、毎年度、自己評価を付した報告書を提出しなければいけない旨が定められている。
違反があってから取り締まる独占禁止法では、対応に時間がかかりすぎることが、新法制定の背景にある。
新法が成立したのは2020年5月。この2年ほど前から、台頭著しいデジタルプラットフォーマー型ビジネスへの対応の検討が始まっており、その中で、巨大プラットフォーマーが消費者の利便性向上に貢献し、さまざまな小規模事業者にビジネスの場を提供していることを評価する一方、マーケットの出店業者との取引で有利な地位を築きやすいことが指摘された。
また、公正取引委員会の調査では、出店者が不利な条件を押し付けられる問題も浮かんだという。
新法で経済産業省は、特定デジタルプラットフォーマーからの報告書などをもとに運営状況のレビューを行い、報告書の概要とともに評価の結果を公表。その際、取引先事業者や消費者、学識者等の意見も聴取し、関係者間での課題共有や相互理解を促す措置を取る。独占禁止法違反のおそれがあると認められるケースを把握した場合には、経産大臣が公取委に対し、独禁法に基づく対処を要請する。
巨大IT企業の規制をめぐり欧州連合(EU)では、独占的な行為などに対し高額な制裁金を科すなど強化を進めている。これとは対照的に日本の新法では企業に自主的な改善を促すのが狙い。違反の具体例の提示がないことなども合わせ、ネットでは実効性を懸念する指摘は少なくない。