大学生のワンルームマンション需要に変化
投資物件にも変化が出そうだという。大学のオンライン授業が普及し、地方出身の大学生の中には都内のワンルームマンションを引き上げ、地方の実家に住み、授業を受けている人も少なくない。大学周辺の賃貸ワンルームマンションの需要は減ると見ている。実際に東京都、神奈川県、埼玉県で計1万1100戸の単身者向け賃貸住宅の需要が消失した、と不動産サービス・タスが2020年8月にレポートを発表したことを紹介している。
本書は「週刊SPA!」を発行している扶桑社から出ているため、本書の随所に同誌特別取材班によるルポが掲載されている。コロナ禍により、タワーマンションでラウンジやジムなどの共用施設が閉鎖されていることやリモートワークが急増し、羽田空港「新ルート」下のマンションの不動産価格に影響が出ていることをレポートしている。
「東京都心やその周辺でなくてもよい」という価値観の転換は、日本の不動産業界に大きな影響をもたらしそうだ。数年単位では3~5割程度の下落になっている物件も出てくるだろう、と著者は予想している。
評者は平成の大バブルの崩壊時に、手持ちのマンション価格が5割下落し、大きな含み損を抱え、その解消に長年苦しんだ苦い記憶がある。暴落は、「売る」側にとってはマイナスだが、「買う」側にとってはプラスである。東京オリンピックの開催の可否、新型コロナウイルスワクチンの効果など、今年の転換になるポイントを見逃せない。
「激震! コロナと不動産」
榊淳司著
扶桑社
860円(税別)