世界中で日本酒がトレンドとなっている今、自国の文化であり、歴史を体現している日本酒について理解しておきたいものです。
今回は、ビジネスパーソンとして、どのように日本酒と付き合い、楽しめばよいかという視点で構成されている一冊を紹介します。基本的な知識、会話で必要な言葉、押さえておくべきマナーについて学ぶことができます。
「ビジネスエリートが知っている 教養としての日本酒」(友田晶子著)あさ出版
日本酒とはいったい何なのか?
ふだん、「日本酒」という名前をなにげなく使っていますが、改めて考えてみると、インパクトのある名前です。どこの国を見ても、フランス酒、アメリカ酒、中国酒(総称としてなくはありませんが)、ロシア酒、インド酒、チリ酒など、国名をそのままつけたお酒は存在しません。「日本酒」とは、いったい何なのか?
著者の友田晶子さんは、次のように言います。
「日本のお酒は、日本の法律『酒税法』で次ページのように定められています。『酒税法』は、国税庁が管理する、酒税の賦課徴収と酒類の製造及び販売業免許などについて定めたものです。酒税法では『日本酒』ではなく、『清酒』と呼ばれます。『清酒』はアルコールが2度未満の米と米麹と水を使用し、発酵させてこしたものです」
「ちなみに、こさないものを『どぶろく』といいます。一度こせば、『清酒』となります。こす際の『きめの大きさ』に関しては決められていないので、ドロリとした濁り清酒もあれば、さらりとした濁り清酒も、すっきり透明の清酒もあります。また、『その他政令で定める物品を原料として』造ることが認められています」
「物品」とは、麦やあわ、トウモロコシなどの穀物、ブドウ糖や水あめ、アミノ酸塩など、旨味のもとになるもの、醸造アルコール、焼酎、清酒を指します。
友田さんは、
「これらの副原料を、お米、米こうじの重量を超えない範囲で使用を認められているものを『普通酒』といいます。一般に日本酒としてもっとも多く流通しているのは、この『普通酒』です。どんな原料を使っているかは、日本酒のラベルに表記されていますので、確認するといいでしょう」
そう、教えてくれました。
知るほどに奥が深い日本酒
いま、巷では「教養としての○○」という本が流行っています。お酒をテーマにしたものは多いのですが、ワインやウイスキー、ビールをテーマにしたものがほとんどです。日本酒の本は少ないので貴重ではないかと思われます。
ここ数年は世界中で和食が好まれていますから、日本酒も人気が出て当然といえます。細かい知識は別に知らなくてもいいという人も、日本酒の嗜み方だけでも読んでおくと役立つと思います。
日本酒の種類ごとに美味しい温度が異なり、それらの情報を披露する機会があったらちょっと自慢できそうです。
たとえば、日本酒のためにつくられる米があり、酒造用米がどのようにできていて、ふつうの米となにが違うのか。また、米と水の組み合わせによって味が大きく変わることや、「吟醸」と「大吟醸」の違いは何か、料理に「大吟醸」は向かないなどの、興味深い話が山積です。
日本酒が好きで興味があるけど、なかなか...... という人がいれば、この本を通して日本酒の奥深さを垣間見て欲しいと思います。格好の日本酒入門書と言えるでしょう。(尾藤克之)