コロナ禍で、政府は東京都や大阪府など11の都府県に2度目の緊急事態宣言を発出したものの、テレワークの実施率が昨春より低下していることが、日本生産性本部の「働く人の意識調査」でわかった。
2度目の緊急事態宣言のなか、テレワーク実施率は22.0%と、前回の2020年5月と比べて10ポイント低い水準にとどまっている。
日本生産性本部では、「テレワークに適した職種の選別が一定程度終えており、国内のテレワーク率は2割前後で定着するのではないか」とみている。
1都3県は「41% → 32%」
今回(2021年1月)の調査時点におけるテレワークの実施率は22.0%で、前回の緊急事態宣言時の2020年5月調査の31.5%と比べると、9.5ポイント低くなった。テレワーク率は、昨年7月で20.2%、10月では18.9%だった。日本生産性本部では、7月と10月、今回の調査のテレワーク率に有意差は確認できないとしており、
「10月から1月にかけてテレワーカーが統計的に増加したとは言えない。雇用者に占めるテレワーカーの割合は7月調査以降、2割前後で変化していないというのが現状」
とみている。
2度目の緊急事態宣言の発出が先行した1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)の1月調査でのテレワーク実施率は32.7%と高い割合を示したが、昨年5月の41.3%を下回った。
1都3県の昨年7月調査でのテレワーク実施率は31.4%、10月では28.3%で、日本生産性本部は、この1月の32.7%と10月の28.3%との比較でも統計的有意差はなく、1月調査の高い実施率は「感染拡大に対応した結果とは言えない」という=下グラフ参照。
こうしたことから、日本生産性本部は「テレワークに適合した職種・業務担当者の選別は、ある程度完了しており、テレワーカー自身も働き方に慣れてきた実態が浮き彫りになっている。わが国のテレワーク率は2割前後で定着する様相である」と分析。緊急事態宣言の再発出に先立って、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は「テレワーク実施率7割」の目標を提言。政府も出勤者の7割削減を実現する方針を打ち出したが「今回の調査でテレワークの現状を考えると、この目標の実現には大きな困難が伴うと思われる」と報告した。
76.8%が政府「信頼していない」
新型コロナウイルスの感染拡大は2020年11月から大規模な第3波が続いている。そのタイミングでの調査だったこともあり、今後の見通しについては、「悪くなる」が28.9%と、昨年10月調査の22.5%から増加。「やや悪くなる」(29%)を合わせた悲観的な予想は57.9%(10月は51%)で、7月調査の水準(悪くなる=31.6%、やや悪くなる=27.3、計58.9%)に戻っている。
調査では、社会的制度・システムに対する信頼性について継続して質問。政府に対して「まったく信頼していない」が、1月調査では32.4%と、2020年10月調査の20.1%から大幅に増加。これまでで最多となった。「あまり信頼していない」(44.4%)を合わせると76.8%が政府を「信頼していない」と考えていることになる。
「まったく信頼していない」は、都道府県(17%)、市区町村(15.4%)についても過去最多となるなど、行政への信頼性の低下が目立っている。また、医療システムについても「まったく信頼していない」(9.8%)、「あまり信頼していない」(27.4%)の両回答がいずれも過去最多となり、信頼性がやや揺らいでいることが示された。
政府・自治体は、感染拡大抑止で外出自粛や人との接触を減らすよう、呼び掛けている。「不要不急の外出」についての態度を性別でみると「できるだけ避けるようにしている」割合は男性46.6%、女性53.7%。年代別では。70代以上で60.4%と最も高く、30代が36.2%で最も低かった。
一方、「避けていない」(「まったく避けていない」「あまり避けるようにしていない」の合計)は、20代が19.9%で最も多く年代が高まるにつれて少なくなっていく。外出自粛などの呼び掛けは、それに対する意識が希薄といえるセグメントにどう伝えるかが行政の課題だろうと日本生産性本部では分析している。
なお、今回の調査(4回目)は、1月12日と13日に実施。企業・団体に勤める20歳以上の1100人が対象。日本生産性本部が1月22日に発表した。