急に在宅ワークを始めた会社には「出社被害者」が多い
――なるほど。2つ目として、職場の「名もなき雑務」の問題があります。電話とりとか、コピー機のインクの補充とか、山のようにある細かな仕事です。多くの場合、投稿者のような女性事務員だけが担わされることが多いですよね。
川上さん「そのとおりです。かつて、働く主婦層に職場の同僚とのお花見について尋ねたことがあります。その際、意外なことに職場の同僚と花見したいとは『思わない』と回答した人が6割にものぼるという結果となりました。『思わない』と回答した人に理由を聞くと、『準備、片付けに手間がかかる』『場所取りが大変』などの言葉が並びました。花見一つをとっても、職場では女性が準備や片付け、場所取りなどの雑務を任されやすい傾向があるのが実態です。
雑務というと軽く捉えられがちですが、分量が重なれば重なるほど、負担感は増していきます。1人で雑務を担わされる投稿者さんがまさにそういう状態です。管理する側は、そのことをしっかりと頭に入れておくべきだと考えます」
――今回、投稿者は「一番職場に近い」という理由で毎日出社になりましたが、こういう「在宅ワーク」と「出社」の分担の仕方をどう思いますか?
川上さん「業務分担の判断にはさまざまな要素が関係してくるため、部分的な条件だけを挙げて一概に判断の良し悪しを評価することは難しいと思います。あくまで推測ですが、投稿者さんの職場では、コロナ禍で出勤者の比率を極力下げるに当たり、通勤負荷が比較的少ない人に優先して出社してもらうことが最適だという判断になったのかもしれません。
ただ、投稿者さんは現状に強い不満を抱いています。職場側が投稿者さんの納得を得られていないことは明白であり、今の業務分担のあり方には、大いに改善余地があると考えます」
――投稿者はLINEの会話で、在宅ワーク仲間が美容院やママ友とのランチに出かけていることを知りましたが、かなり「ゆるい」会社に思われます。こういう会社の体質について、どう思いますか。
川上さん「自由さというメリットがある会社なのだろうと思います。各自が独立して仕事をコントロールできているようなので、基本的には働きやすい職場なのでしょう。ただ、投稿を見ると、『3日分の昼休み3時間分を私用でまとめてとったのでセーフ』など、労働基準法違反と思われる対応が日常化しているルーズさがあるようです。ガバナンスに難があると言わざるを得ません。投稿者さんは、会社のルーズさの犠牲になってしまったようにお見受けします」
――当然ですが、回答者の多くは「会社がおかしい」「上司や社長に掛け合うべきだ」と答えていますね。
川上さん「コロナ禍のような非常時にイレギュラーな事態が生じてしまうのは致し方ない面もあります。しかし、投稿者さんの状況は明らかにおかしいと思います。業務設計や職場体制を改善する必要がありますが、最も効果的な相談先は決定権を持つ社長さんです。既に社長さんに相談されているようなので、具体的な改善につながればと願います」
―― 一方で、「私も同じ目にあっている」という共感の声も多く寄せられました。ほかにも同じ立場で苦しんでいる人が大勢いそうです。
川上さん「コロナ禍が発生する前から、在宅勤務を進めてきた会社は、緊急事態宣言発出があっても比較的トラブルが少なかったように思います。しかし、大半の会社はコロナ禍を機に無理やり体制変更を迫られたはずです。出社および慢性的な残業が前提だった体制のままコロナ禍を迎えた会社では、投稿者さんと同じ状況になっている人がたくさん生まれていることは容易に想像できます」