「ディスコ」とはどういう場所か
本書の中に、著者の一条真也さんがディスコを解説する箇所があります。ディスコで踊ることに、どのような意味があるのか書かれています。
「宗教人類学者の伊藤幹治氏は『宴と日本文化』において、沖縄の与論島で正月七日に行なわていた『ウタカキ遊び』という行事を紹介している。ウタカキ遊びの当日、島の老若男女が晴着を着て酒と肴をたずさえて丘に集まり、そこで飲食を楽しんだ。その限りでは別に珍しくも何ともないが、その際、若い男女が別々に集まって円陣をつくり、互いに歌を掛け合ったり、踊りをおどったりして楽しんだという」
「さらにおもしろいのは、中にはこれが縁となって結ばれる男女もあったというのである。これはディスコでのダンパなどで、現代の若者たちが円陣をつくって『フーフー』とか『フェイフェイ』とか言いながら踊り、ナンパし、なかには結婚する者がいるのとまったく同じではないか! ウタカキ遊びのような例は、他にも世界各地に見られる」
男女が集い、酒を飲みかわし、音楽を楽しみ、踊りをおどるようなコミュニケーションは世界の至るところで見られていたのです。そのうえで、「ディスコとは野外の宴を吸収した空間である」と、一条さんは言います。
「ディスコで踊りまくるとハイになれるのは、そこにおわす神と交信できるからかもしれない。では、ディスコにはどんな神がいるのかと聞かれると、正直言って、ぼくにはまだわからない。これから、つきとめていくつもりである」
本書では、主にイベントの歴史と未来について説明されています。レジャーランドなら、プレジャー・ガーデンから、ディズニーランドの誕生、日本での成功の理由、これから流行すると思われるテーマパークが主題です。また、咲くだけで実をつけなかった、「バブル」という徒花(あだばな)を掘り下げることができる歴史書としても価値があるように思われます。(尾藤克之)