菅義偉首相が華々しくぶち上げた、温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロ(カーボンニュートラル)にする目標に、企業の43.4%が「達成は困難」とみていることが、帝国データバンクの調べでわかった。2021年1月19日の発表。
菅首相は昨年10月26日、国会での就任後初の所信表明演説で、成長戦略の柱に「経済と環境の好循環」を掲げ、「2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量をゼロにする」との政策目標を表明。2021年度の税制改正大綱や総合経済対策にも、「脱炭素」や「カーボンニュートラル」が盛り込まれるなど、企業への支援策を積極的に打ち出している。
しかし、コロナ禍で東京都や大阪府、愛知県、福岡県などの11都府県に2度目の緊急事態宣言が発令されるなど、現状はそれどころではなくなっている。目標達成に向けた取り組みも後手に回っている状況だ。
「温室効果ガス」優先度低い実態が浮き彫りに
政府の旗振りやSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みなど、世界的な機運の高まりもあり、政府や自治体のみならず民間企業でも取り組み目標を掲げる動きが現れている。
調査によると、温室効果ガスの排出抑制に対して、回答があった1万1479社のうち、82.6%が「取り組んでいる」と答えた。「取り組んでいない」企業は13.6%、「わからない、不回答」は3.8%だった。
温室効果ガスの排出抑制に対して何らかの対策は講じている企業は多いものの、企業に「排出量実質ゼロ」の目標達成の可能性を聞いたところ、「達成は困難」と答えた企業は43.4%と、4割を超えた。さらに、「達成できない」は17.9%だった。
一方、「達成可能」と回答した企業は15.8%。このうち、「今以上の取り組みをすることで達成可能」とした企業は13.3%。「現在の取り組みで達成可能」な企業は2.5%にとどまった=下の円グラフ参照。
「達成は困難」と答えた企業の具体的な意見をみると、
「目標を達成するためのロードマップを示す必要があり、産業界との連携を深める必要がある」(電気計測器製造、神奈川県)
「言うは易し行うは難しで、具体的な計画と目標がわからない」(し尿収集運搬、石川県)
「取り組みについて何をどのようにすべきか、何を手始めに重点的に取り組むかなどの明確な説明が必要」(農産保存食料品製造、大分県)
といった内容だった。
企業は温室効果ガスの排出抑制などの環境問題への取り組みは必要であるとしつつも、政府が具体的な政策を民間の丸投げしているとの印象を持っているようだ。