「阪急」の名前は、プロ野球「阪急ブレーブス」が売却(1988年)されたころからか、全国的知名度は後退しているが、「私鉄王国」と呼ばれる関西では別格的存在だという。
本書「関西人はなぜ阪急を別格だと思うのか ブランド力を徹底検証!」は、そのワケを、創始者・小林一三の開拓精神豊かな逸話を織り込みながら解き明かした一冊だ。
「関西人はなぜ阪急を別格だと思うのか ブランド力を徹底検証!」(伊原薫著)交通新聞社
宝塚歌劇、東宝も「阪急」
プロ野球団の経営からは撤退した阪急だが、エンターテインメント事業として手がけ、その歴史が100年を超える宝塚歌劇はなお絶大な人気を誇る。本拠地の兵庫・宝塚市のほかに東京にも専用劇場があり、各地で公演を行っているから、関西でその電車に乗ったことがなくても「阪急」を知っている人は少なくない。映画会社の大手、東宝も小林一三が設立。「阪急」は、じつは関西に限られず、広く親しまれているブランドのベースだ。
阪急は、その幹は鉄道会社ではあるが、公共事業である鉄道を主力とする会社らしからぬブランド構築が阪急を別格に押し上げたというのが著者の見解。「世界で初めて鉄道会社が手がけたデパート」を開設したことは、とくに今のブランド構築への第一歩だった。
阪急百貨店について本書では、「関西における阪急の威力」を解説する一番手に起用。その紙袋が、有名デザイナーを起用するなどして、他店にはない「格」を持つにいたったことなどを解説する。