民主党内をまとめきれるかがカギになる
「コロナ感染拡大と議会がバイデン新政権の最大の敵だ」と指摘するのは、大和総研のニューヨーク・リサーチセンター研究員(NY駐在)矢作大祐氏だ。「米国経済見通し 新政権誕生後の米国経済。バイデン新政権が追加支援案を発表、まずはお手並み拝見」(1月20日付)の中で、まずこう述べた。
「新型コロナの再拡大や、それに伴う政府による規制強化等によって、米国経済は景気の悪化リスクに再度直面している。ワクチン接種も漸進的なものであることから、短期的には感染再拡大の収束の目途が立たず、実質GDP成長率は2020年10~12月期にペースは大幅鈍化し、2021年1~3月期はゼロ成長付近まで減速すると見込まれる」
ただし、バイデン新大統領は大規模な追加支援策を発表した。この効果がどう出てくるのか。矢作氏は、こう予測する。
「景気の下振れリスクに直面するなか、2020年12月末に成立した追加的な財政支援に加え、バイデン新政権はさらなる追加支援を公表した。これは1.9兆ドル規模のもので、2020年3月に成立した『CARES Act』(新型コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法)の約2.3兆ドルに近い規模となる。『CARES Act』によって、2020年の7~9月期に米国経済が急回復したように、感染再拡大が落ち着き、規制が緩和・解除された後の景気のスムーズな持ち直しをサポートすることが期待される」
しかし、追加支援を実現するための議会運営に不安材料があると、矢作大祐氏は指摘する。バイデン大統領が民主党内をしっかりとまとめ切れていないからだ。こう続ける。
「民主党が上下院で実質的な過半数を獲得したとはいえ、追加支援案の実現が確約されたわけではない。上院でのフィリバスター(議事妨害)を回避するには60票が必要であり、上院民主党議員(50票)を団結させたうえで、上院共和党議員(10票)の支持を得る必要がある」
米国の上院は、言論の自由や少数意見を尊重する気風が強い。このため「フィリバスター」と呼ばれる議事妨害により、法案の採決を阻止することを制度として認めているのだ。法案を通したい与党側が、この議事妨害を打ち切って採決に移るためには、半数を大幅に超える議席数が必要となる。現在は、定数100の5分の3、つまり60議席が採決に必要なのだ。
矢作氏は、
「財政調整措置の活用によるフィリバスターの回避も可能だが、民主党内をまとめ上げることが必要であることに変わりはない。追加支援案の実現に向けて優れた政治的手腕を発揮することができるか、バイデン新政権の先行きを占う試金石といえる」
と結んでいる。