「前回のような全国民一律の10万円給付はやるつもりはありません!」
新型コロナの緊急事態宣言が再発令されたが、麻生太郎財務相は20201年1月19日の記者会見で、はっきり言い切った。
困窮世帯や減収世帯に限った支給についても、
「考えにくい」
と否定した。
ネットでは、10万円給付の是非よりも、その木で鼻をくくったような麻生節の物言いに、
「あんたのカネじゃない。われわれの税金だ」
と、怒りの声が殺到している。
「ワアワア歌ったり、怒鳴ったりする所にカネを出す」
1月19日に行われた麻生太郎財務相の会見の一部始終を、テレビ東京の官邸キャップ篠原裕明記者がYouTobe上にアップした動画「給付金の再支給ありますか? と麻生大臣に聞いたら...」で見ると、麻生氏らしい「物言い」にあふれたものだった。
篠原裕明記者が、
「11都府県に緊急事態宣言が出されて、日に日に前回の緊急事態宣言時のように全国民一律の10万円定額給付金を求める声が高まっています」
と聞くと、麻生氏はジロリと篠原記者が見ながらこう語った。
「昨年出した時は、とにかく簡単な方法だと。一律10万円だからもっとも簡単ですぐ配れると。あんたのところ、テレ東さんもそう報道したんだよな。ところがそうはいかなかった。いろいろあって配るのが遅れた。私ども、いろいろと経験を積ませてもらいました。効果的な対策を講じるにはと考えるとだな...」
と述べて、今回の緊急事態宣言の話に移った。
「今回は、ほら、あのワアワア歌ったり、怒鳴ったりするところ。飲食店か。営業時間の短縮を要請するわけだから、補償金を出さなければいけない。爺ちゃん、婆ちゃんでやっているとこだけじゃなくて、大企業にも出します。飲食関連の、ほら、おしぼり屋、つまようじ屋もあるな。それも全国一律というわけにはいかない。大都市圏だな。東京だって、あんた、この辺(永田町)と三多摩の山奥の日ノ出町あたりとでは(出すカネが)違うわけですよ」
それやこれや、予算を出す必要があるところを並べ立てたあと、最後に肝心の質問に、こう答えた。
「前回と同じように一律10万円というのはやるつもりはありません!」
すかさず別の記者が、
「低所得者とか減収した人とかの世帯に絞った形で給付することは、考えにくいですか」
と聞くと、麻生氏は、
「考えにくいでしょうね!」
と、バッサリ切って捨てた。
麻生氏は昨年春の現金10万円給付の決定前、2009年のリーマン・ショック後に実施した定額給付金は効果がなかったなどとして、一律給付に反対する考えを述べていた。
しかし、当時の安倍晋三首相が公明党や二階俊博幹事長などの強い要求に屈して10万円給付の実施に転じたため、仕方なく応じた経緯がある。
また、昨年10月には、福岡市で開いた自身の政治資金パーティーでの講演で、
「10万円給付は、その分だけ個人の貯金に回っただけだった」
と述べて、物議をかもしたことがある。よほど、一律の現金給付に反対らしい。
「菅総理は言葉が響かないが、麻生氏は悪い意味で響きすぎる」
今回も、麻生財務相の発言には批判の声が上がっている。ただし、その給付金支給の是非より、「ものの言い方」に反発する人が多いようだ。
1月20日放送の日本テレビ系情報番組「グッとラック」では、キャスターの落語家の立川志らくさんは、こうコメントした。
「言い方がちょっとねえ、菅総理は言葉が響かないけど、この方の場合は悪い意味で響きすぎる。もっとほかに言いようがあると思うんです。『税金を年貢だと思っているんじゃないか』といった臭いがプンプンしてくるんですよね」
コメンテーターのお笑い芸人、田村淳さんもこう語った。
「よく聞けば理解できることを言っていますが、もう少し国民に寄り添う言い方や態度をすればいいのにと思いますね。政治家が国民にどうやってメッセージを出すかは大事です」
立憲民主党の小沢一郎衆院議員も1月19日に、ツイッターへこう投稿した。
「一律10万円の再給付『するつもりはない』麻生財務相。物には言い方がある。食べ物にも事欠く方々は確実に増え、炊き出しも目立つ。政治が寄り添うべき時に、財政上の都合によりすべての可能性を簡単に否定するのはあまりに残酷な物言い。大体国民のお金である」
と批判した。
ネット上でも、こんな怒りの声があふれている。
生活困窮者の支援活動をしているNPO法人ほっとプラス理事の藤田孝典氏は、現金10万円の一律支給を求めて、こう投稿した。
「米国では3回目の現金一律給付が約14万円で実施予定だとバイデン次期大統領の陣営が述べています。日本では生活困窮者が増えており、昨年の10万円の給付1回だけで自粛しろ、外出するな、政府に協力しろ、ということが通用するでしょうか。生活困窮者は日増しに増えており、毎日、多くの相談者が生活苦に耐え切れなくて相談に来ているのです。緊急事態宣言下のいま、『生活を支えるために政府が給付に向けて準備している。安心してほしいし、もう少し辛抱してほしい』とメッセージを出せば、どれだけ救われる人がいることでしょう。改めて再支給を強く要請します」
「麻生太郎にとって日本国民は池の鯉」
ただし、再度の現金給付を求める意見は少なく、多くの人が麻生氏の物言いと振る舞いに激怒していた。
「現金一律10万円なんて、くれるなら貰いたい程度にしか思っていないが、まあこの態度はひどいよね。相変わらず自分の懐から出すような発言! あんたのお金ではなく、国のお金! 日本としての金の使い方なのだから、財務省や給付金アレルギーのお爺ちゃんが決める話ではなく、国会できちんと審議したうえで決めようよ」
「日本の政治に今一番必要なのは二階俊博幹事長や麻生太郎、さらに国会議員ではないが森喜朗五輪組織委会長など、権力を握って放さない老害爺さんを一刻も早く排除すること。これだけでも政治はかなり変わる。議員は75歳になったら運転免許返納と同じく議席を返納し、客観的な判断が出来る若手の議員にまかせるべき」
「麻生太郎の発言というだけでイラっとする。なあ、もうみんなでこのお方を落とそうよ。もうこんなやつ大臣にしとったらアカンで、自民党。ホントさようなら。野党、たのむから頑張ってくれ。選挙で票を入れたくなるように頑張ってくれ...」
福岡の地元からはこんな声があった。
「麻生太郎は大久保利通や吉田茂の血を引き、そもそも我々一族が近代日本国家を創ったという自負があります。建設業や石炭で材を築いた田舎財閥ではありますが、一族からは皇族にも嫁いでおるため、九州経済界では圧倒的な存在感を誇り、誰もが競合することを避けます。福岡空港や博多駅に降り立った人は『麻生』の名を冠する企業広告の多さに驚いた人も多いと思います。それゆえ、『国民に寄り添う』などといった発想は一切ありません。トランプ米大統領が来日した時に、池の鯉に乱暴に餌をばらまいたことがありましたが、麻生太郎にとってはあの鯉が日本国民のようなものです。ただし、餌はあげませんが」
(福田和郎)