トランプ最大の「罠」は中国系アプリ禁じた大統領令
コロナ禍や経済の悪化ばかりか、退任間際までの在任期間中トランプ氏が米国内外を驚かせた政策や行動で、バイデン次期大統領は就任当日から、新たな対応や見直しの作業を迫られる見込み。
日本銀行の政策委員会審議員を務めた野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト、木内登英さんは2021年1月18日付で「注目される米大統領就任式直後の大統領令」と題するコラムをウェブサイトに公開。そのスケジュールを解説している。
それによると、バイデン氏は大統領就任当日に、2020年以降の温室効果ガス排出削減などのための新たな国際枠組みで、トランプ政権で離脱した「パリ協定」への復帰を実施。さらに、イスラム国家などからの入国を禁じたトランプ氏による大統領令を破棄。また、連邦職員や州境を越えて移動する国民にマスク着用を義務付ける大統領令に署名する見通しという。
21日と22日には、新型コロナに関連する大統領令への署名や、感染拡大で経済的苦境に立つ国民の救済策を講ずる命令を発する予定。その次の週には、米国製品購入促進、自動車の電動化、風力発電を増やすプロジェクト推進などで大統領令に署名する可能性があるという。
大統領令は議会の承認や立法手続きを経ずに連邦政府や軍に発することができる行政命令。トランプ大統領は選挙で敗北し退任が近づく中で、次々と大統領令に署名。バイデン氏が苦境に立たされることを狙ってのことだが、木内さんがその具体例として指摘したのは、1月5日にトランプ大統領が署名した、アリペイなど8つの中国系アプリとの取引を禁じた大統領令だ。
木内さんの説明によると、この大統領令の発効はトランプ大統領退任後の2月。バイデン政権で「この大統領令を破棄すれば、反中機運が強い議会では、民主、共和双方から批判を受ける可能性がある。他方で破棄しなければ、中国からの報復措置を受ける可能性がある」という仕掛けがなされたものなのだ。
トランプ大統領が、退任に際して施した仕掛けはまだあり「トランプ大統領が残した負の遺産に、バイデン次期大統領は長らく苦しめられることになるのだろう」と木内さんは指摘している。