上目遣いで飛び出した大きな目玉に、丸っこい体つき。2020年10月に新品種として登場した金魚「サクラチョウテンガン」=写真参照=の知名度が、じんわりと全国に広がってきた。
「金魚の街」として知られる愛知県弥富市生まれ。深海から一気に釣り上げた魚のような顔で、人によってはグロテスクに映るかもしれないが、これが「ブサカワ」や「キモカワ」と評され、ネットをはじめとしてジワジワと人気を集め始めている。
目がビッグ、紅白の模様で縁起がいい!
新品種の「サクラチョウテンガン」が、愛知県庁でお披露目されたのは、2020年10月12日のこと。「生みの親」である弥富市の愛知県水産試験場弥富指導所の担当者によると、
「発表当初、取材に来られたメディアは、(名古屋を拠点とする)在名が大半でした。その記事を読んだ東海地方の読者の方々が、ツイッターなどのSNSで『ブサカワ』『キモカワ』と発信していて、そこから徐々に火が付きました。それが全国的に広まっていったようです」
と、拡散されていった経緯を説明。
ツイッター上には、
「か、可愛いいい。出目金さんいい顔してらっしゃる......」
「新種の金魚いた! 子供が離れない(笑)」
「『桜模様』の鱗が泳ぐたびに美しくきらめき、それでいてチョウテンガンらしいユーモラスな姿が可愛い金魚です」
といった「ブサカワ」を称賛する声も挙がり、盛り上がりをみせている。
コロナ禍で夏祭りの中止が相次ぎ、「金魚すくい」の出店(でみせ)や金魚を扱う業者などは大きな打撃を受けた。そんな年に開発された「サクラチョウテンガン」という新品種に、担当者らは期待を寄せる。
「ギョロリ」とした目で、上を向いて泳ぐ姿に担当者は、
「『暗い世の中に光明が差した』といった声をいただき、ありがたい限りです。弥富金魚のブランドを高めてほしいですし、日本だけでなく外国の方の気持ちを上向きにできるような金魚になったらうれしいですね」
と、願いを口にした。
日本を代表する「桜」、トップを意味する「頂点」、願掛けの「願」と解釈して、「おめでたい名前」と評する人もいるという。
開発に5年を費やす
「サクラチョウテンガン」は弥富の品種で、丸い体に紅白のまだら模様が特徴の「サクラニシキ」と、中国でデメキンの突然変異種として誕生した「チョウテンガン」を交配(人工授精)させ、誕生へと漕ぎ着けた。
「目がしっかりと上を向いている」
「赤くきれいな桜模様」
「背びれがない」
「尾びれが開いている」
といった特徴があり、体長は当歳魚で8センチほど。約3年で15センチ程度にまで成長する見込みという。開発までに、5年を要した。
水産試験場弥富指導所の担当者は、その理由を
「たとえばメダカの場合、ヒーターを入れた水槽で飼っていると1年中が産卵期なんですね。でも、金魚の場合、産卵期は3月下旬から6月ぐらいまでと決まっているので、その分時間がかかりました」
と話す。
一度誕生に成功した親同士を厳選して、さらに人工授精を続ける。そうやって開発を続け、手塩にかけて育てきた。まだ希少品種のため、当歳魚の市場価格は2万5000円ほどという。