若者の雇用が悪化しているのに......
都道府県別でみると、66歳以上で働ける制度がある企業の割合は、多いほうから秋田県48.1%、大分県43.4%、島根県42.5%、宮崎41.2%、岐阜41.0%の順となっている。高齢者雇用に積極的というよりも、むしろ少子高齢化により労働力が不足している県で、高齢者雇用が進んでいる姿が浮き彫りになっている。
このように、高年齢者雇用安定法があることで、確かに高齢者雇用は進んでいる。しかし、制度があるだけでは、実際に働けている高齢者の状況はわからない。特にコロナ禍によって、雇用は不安定化しており、失業者が増加している。
厚労省の「高年齢者の雇用状況」は2019年7月から2020年6月までの状況をまとめたもので、新型コロナウイルスの感染拡大が本格化する前の2019年からの65歳以上の失業者数を総務省の労働力調査で見た=表2参照。
65歳以上高齢者の失業者数は2019年12月の12万人をボトムに、前回の緊急事態宣言が発令された2020年4、5月と18万人に増加している。その後、緊急事態宣言の解除により7月にかけて減少したが、8月からは再び増加し10月には20万人に達した。
労働力調査が11月分までしか発表になっていないため、その後の動向は定かではないが、例年年末にかけて失業者は減少する。しかし、年明け早々には再び緊急事態宣言が発令されており、昨年の緊急事態宣言の発令時のように、失業者が増加する可能性は高く、警戒が必要だ。
さらに、高年齢者雇用安定法の改正により、今年4月から企業には定年年齢を65歳から70歳まで引き上げる努力義務が課される。企業は、定年の廃止、70歳までの定年の引き上げ、70歳までの継続雇用制度の導入などに努力が求められる。
だが、コロナ禍にあって、若年層の雇用自体が悪化している現状で、企業が努力義務の70歳までの雇用を実施できるのか――。それは非常に不透明だろう。
新型コロナウイルスの感染拡大は雇用を大きく蝕んでいる。(鷲尾香一)