KDDI(au)が2021年1月13日、携帯電話の新料金プラン「povo」(ポヴォ)を発表したことで、携帯電話大手3社の新料金プランは出そろった。
概ね3社横並びの結果となったが、武田良太総務相が1月15日の記者会見で、KDDIが発表したプランについて、
「非常に紛らわしい。最安値と言いながら、結局、他社と同じ値段」
と、やり玉にあげたことが波紋を広げている。
ネット上では武田総務相に対して、
「武田大臣はスマホに疎いのではないか。無用の混乱を業界に引き起こしている。勉強し直したほうがいい」
と総スカン状態だ。
ドコモ社長が「ジャンケンは後で出すものですね」と皮肉
携帯電話大手3社のNTTドコモ、ソフトバンク、KDDI(au)がこれまでに発表した「値下げ」の新料金プランをざっとおさらいすると――。
3社とも、現行の通信規格「4G」と次世代の通信規格「5G」に対応した共通プランだ。また、店舗でのサービスはなく、オンラインでのみ登録・受付してコストダウンを図ること、そしてサービス開始が今年3月に予定していることなどが共通している(以下、価格はいずれも税別)。
まず2020年12月3日に、最初に発表したNTTドコモの「ahamo」(アハモ)は――。
(1)新規契約の事務手数料とMNP(携帯電話番号ポータビリティー=持ち運び)転出手数料、細かい割引条件などを極力なくしたシンプルな内容。価格は、月間データ容量は20GB(ギガバイト)で月額2980円。データ容量の追加は、1GBあたり500円。5分間までの国内通話が何度でも無料。
2番手で20年12月22日に発表したソフトバンクの「SoftBank on LINE」は――。
(2)「LINE」がデータ容量を消費せずに使い放題になるのが特徴だ。価格はドコモ「ahamo」と同じ月額2980円で、月間データ容量が20GBであること、データ容量追加は1GBあたり500円であることも同じ。5分間までの国内通話が何度でも無料であることまで同じだ。
そして、最後に2021年1月13日に発表したKDDI(au)の「povo」(ポヴォ)は――。
(3)月間データ容量は20GBで月額2480円と、先行する「ahamo」と「SoftBank on LINE」に比べて500円安い「最安値」であることをうたっている。ただし、「ahamo」と「SoftBank on LINE」では標準となっている「5分間までの国内通話が何度でも無料」がなく、500円追加すれば同じく5分間まで通話無料となるから、「5分間かけ放題」の条件なら3社横並びとなる。そのほか、さまざまな追加サービスがトッピングで選べるのが特徴だ。
ところで、KDDIの高橋誠社長が「povo」の記者発表の質疑応答の際、「大手3社の中では最安値」と強調したことが物議をかもしている。同社のホームページでは「非常にお求めやすい価格」と表記している。
携帯電話関連のニュースサイト「ケイタイWatch」(2021年1月14日付)「auの『povo』にドコモ井伊社長『さすがです』、でもahamo効果でMNP転入増に」という記事の中で、NTTドコモの井伊基之社長が、こう皮肉っているのだ。
井伊社長は、携帯電話ニュースサイト各社のグループインタビューに応えて、こうライバルを「称賛」したのだった。
「さすがという印象です。5分通話定額をスパッと分けてこられて、試合巧者だ。我々も(『povo』と同じような料金を)考えていました。しかし面倒くささを排除しました」
井伊社長によると、「ahamo」を開発する際、ドコモ側ではユーザーの3分の1は5分通話定額、また別の3分の1は完全通話定額、そして残り3分の1は通話機能を求めていないと考えていた。
つまり、3分の2は通話関連の仕様が必要と見ていた。無料で通話できるアプリがあることも踏まえ、5分通話定額を含めることに決めたわけだが、井伊社長は、
「そこを突かれ、『最安値』と打ち出してこられた。やられました。ジャンケンは後で出すものですね」
と痛烈な皮肉を飛ばしたうえで、自社について、
「それでも(20GBで5分通話定額込みの2980円が)真似されるようになった。これまでは追いかけてばかりだったから、褒めてやってください」
と自画自賛したのだった。
武田総務相「最安値と言いながら、他社と結局同じ値段」
こうした携帯大手同士の「慣れ合い」にも見える、お互いの「称賛」と「自画自賛」に激怒したのが、携帯電話料金値下げを強硬に押し進めている武田良太総務相だ。1月15日の記者会見で、「最安値」を強調したKDDIの高橋誠社長をやり玉にあげた。
総務省の公式サイトによると、記者たちとのやりとりはこうだ。
記者「先日KDDIが20GBで2480円の新プランを発表した。KDDI側は最安値をうたっているが、通話料金を含めると、実質ドコモ、ソフトバンクが発表した新プランと横並びになる。『最安値』という表示方法について、どう考えるのか。結果的に携帯電話料金が横並びになったことも、どう受け止めているのか」
武田総務相「非常に紛らわしい発表だった。先般2大臣会合(編集部注:武田総務相と、公正取引委員会・消費者庁を主管する井上信治・内閣府特命担当大臣)、そして消費者庁を交えた中で、利用者がわかりやすい、選択しやすいやり方を求めてきた。最安値と言いながら、他社と結局同じ値段だった。あたかも国民に対して他社よりも一番安い、500円安い2480円だと、すべて同じ条件だと思わせるやり方は、非常に残念だ」
と、不快感をあらわにしたうえで、こう注文をつけた。
「今後、利用者が選択しやすい、わかりやすい説明をしっかりとやっていただきたい。利用者が『契約した時といざ使ってみた時の条件が違うじゃないか』というトラブルが起こらないように、しっかりとした丁寧な説明、わかりやすいシステムを示して、無用なトラブルが起こらない状況を作り上げていくことを期待していきたい」
記者「大臣が要請してきた携帯電話関連で、料金面では3社が出そろった。乗り換えの障壁についても手数料の無料化などが各社から打ち出された。大臣から見て喫緊の課題、残された課題は何か。答にあったように広告表示、わかりやすさの案内というところになるのか」
武田総務相「一番大事なのは、利用者のみなさんが今使用しているものが、自分が求めているプランなのかどうかを自己検証することが重要だ。そのうえで、いま低廉なプランがどんどん出てきて、競争が健全化されてきたわけだが、ただ単に最低価格である数字を出して宣伝するのではなくて、価格の内訳に対しても利用者がしっかりと理解・納得できることが重要だ。事業者にとっていいことばかりを示すのではなくて、その内訳をわかりやすく使用者の方々に指し示していくことが重要になってくる」
と述べて、今後は「広告の誇大表示」や「料金プランにつく条件」を中心にメスを入れていく考えを明らかにしたのだった。
(福田和郎)