海外に広がる「日本での開催、無理じゃないの?」
世界中で猛威を振るい続ける新型コロナウイルス。複数の変異株の出現が確認されるなど、いっこうに収まる気配はありません。
そんななか、開催まで200日を切った東京五輪の開催を疑問視する報道が海外でも目立ちはじめましたが、風向きがちょっと変わってきた様子。世界的なコロナの感染拡大や競技選考会の遅れといったことよりも、「そもそも日本は大丈夫か?」と疑問視する声が大きくなっているのです。
一つ目の要因は、日本国内での緊急事態宣言の再発出です。これまで、欧米諸国と比較して「比較的感染が抑えられている」と見られていた日本でしたが、各国メディアは次のように報じています。
Tokyo's Covid outbreak adds to doubts over hosting Olympic Games
(東京のコロナウイルスの急増で、五輪開催への疑念が増している:英紙ガーディアン)
ガーディアン紙は「緊急事態宣言対象エリアは徐々に拡大されて、日本の人口の半数以上が対象になっている」と延べ、こうした状況下での開催に疑問を呈しています。
海外メディアが指摘する二つ目の要因は、「世論調査」です。NHKなど日本の主要メディアが実施する世論調査で、大多数が「東京五輪は中止か延期」と回答したことに注目が集まっています。こうした状況をロイター通信は、「日本の国民は五輪に冷めている」と分析。この記事は世界中のメディアに転載されました。
Japan set to expand state of emergency, public cools to Olympics
(日本は緊急事態宣言の対象エリアを拡大するが、国民は五輪に冷めている:ロイター通信)
3つ目の要因は、日本国内に広がるスポーツ選手や団体の感染状況です。先日、大相撲横綱の白鵬が新型コロナウイルスに感染したニュースは、英BBC放送といった海外の主要メディアでも大きく取り上げられ、日本スポーツ界での感染拡大を強く印象づけました。
さらに、1月に開幕が予定されていたラグビー・トップリーグで、選手・スタッフらの「大量陽性者」が確認されたことから開幕が2月に延期されましたが、「ラグビーの大会もできないのに、五輪ができるのか」と指摘する海外メディアもありました。
今季のトップリーグには海外からスター選手が続々と加入していただけに注目も集まっていたのでしょう。「五輪開催なんて無理じゃないの?」という印象を強めてしまったとすれば皮肉なことです。
それでは、「今週のニュースな英語」は「cast doubt」(疑念を投げかける)を使った慣用句をいくつかご紹介しましょう。
His information cast doubt on that news
(彼の情報は、そのニュースに疑問を投げかけている)
The consumers cast doubt on the quality of the product
(消費社は、その商品のクオリティに疑問を投げかけている)
This information cast doubt on the efficacy of the new drug
(その情報は、」新しい薬の効果に疑問を投げかけている)
菅首相や森会長が「強気発言」を繰り返す一方で、具体的には何も見えてこない五輪対策。緊急事態宣言の再発出や世論調査の結果、さらにスポーツ界の感染状況といった「事実」を見る限り、残念ながら「日本、だいじょうぶか?」の疑念は増すばかりではないでしょうか。(井津川倫子)