鉄道とアニメの切っても切れない関係 はじまりは昭和4年だった...

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   近頃のアニメには、鉄道がよく出てくる。映画「君の名は。」には、東京都心のJR線や東海道新幹線、高山本線など数多くの鉄道が登場した。2018年には、JRグループ公認の変形ロボットアニメ「新幹線変形ロボシンカリオン」が放送された。2020年には西武鉄道で、国民的アニメ「ドラえもん」とタイアップした電車が走り始めた。

   アニメと鉄道がなぜ親和性が高いのかを、本書「アニメと鉄道ビジネス」はさまざまな事例で解き明かしている。著者の栗原景さんは、フォトライター、ジャーナリストで、「東海道新幹線沿線の不思議と謎」(実業之日本社)などの著書がある。

「アニメと鉄道ビジネス」(栗原景著)交通新聞社
  • アニメと鉄道は相性がいい?(写真はイメージ)
    アニメと鉄道は相性がいい?(写真はイメージ)
  • アニメと鉄道は相性がいい?(写真はイメージ)

弾丸よりも速く走るエイトマンが新幹線を抜き去る!

   アニメと鉄道の関係を歴史的に振り返れば、初の国産鉄道アニメは1929(昭和4)年の「太郎さんの鉄道」という作品だ。父親に汽車のおもちゃを買ってもらった太郎さんが、動物たちが乗り合わせる汽車の車掌になるという夢を見るという内容。車内マナーが紹介されているという。

   セル画ではなく、切り紙を使ったアニメで、当時の蒸気機関車や客車が写実的に描かれているそうだ。

   戦後、1963(昭和38)年、手塚治虫原作の「鉄腕アトム」が放送された。この年に始まった桑田次郎作画の「エイトマン」のオープニングに、東海道新幹線が登場していると紹介している。

   弾丸よりも速く走るエイトマンが新幹線を抜き去るシーンが有名だ。まだ新幹線の開業前だったが、試作車両が精巧に描かれているという。

   鉄道とアニメがコラボレーションした第1号は1979(昭和53)年から始まった松本零士原作の「銀河鉄道999」だ。蒸気機関車全廃に伴うSLブームに乗り、C62型蒸気機関車の姿をした999号のリアルな姿に注目が集まった。

   その後、リアルロボットのアニメブームが到来。「機動警察パトレイバー」では、地下鉄銀座線の新橋駅のホーム跡など東京都内の実在する場所が描かれた。

「聖地巡礼」の始まり

   鉄道がアニメにリアルに描かれるようになる。スタジオジブリの高畑勲の「火垂るの墓」には阪急電車が、「おもひでぽろぽろ」には上野駅や寝台特急が登場した。こうした手法は1995(平成7)年公開の近藤喜文監督作品「耳を澄ませば」に受け継がれ、舞台となった京王電鉄の聖蹟桜ヶ丘駅周辺には多くのファンが集まるようになった。「聖地巡礼」の始まりである。

   観光地でもない場所に、突然多くの人が訪れるようになり、鉄道会社も注目するようになった。「涼宮ハルヒの憂鬱」「らき☆すた」「けいおん!」などの作品によって、アニメが現実の風景をモデルにすることが定着。知名度の高い鉄道はロケ地のシンボルになり、ラッピング電車の運行や記念乗車券の販売などによって、多くの人を惹きつけるようになった。

   著者の栗原景さんは「鉄道は誰もが知っているインフラであり、その地域の特色や時代性、生活を表現するのに適している。その作品がどんな街を舞台にし、どんな人々が生活しているのか、想像しやすくなるからだ」と、アニメと鉄道の関係をとらえている。

   そうした中で、2018年に始まった「新幹線変形ロボシンカリオン」は、新幹線を運行するJRグループ5社が全面協力し、H5系はやぶさ、N700Aのぞみ、新800系つばめなど実在の新幹線車両がロボットとなって、謎の敵と戦うというストーリーだ。

   長期的に見れば、少子高齢化によって輸送量が頭打ちになることは避けられない。鉄道以外の事業収入を増やしたいというJR東日本がゴーサインを出して、2015(平成27)年、まずプラレールの新商品としてシンカリオンは発売された。すぐにアニメ化を急がず、JR各社と丁寧に交渉し、JR北海道、JR西日本、JR九州、最後にJR東海が承諾。満を持してアニメ化された。

   物語には新幹線沿線を中心に全国の駅や町が登場する。全76話にわたってロケハンを行い、各地の風景を正確に再現している。敵である巨大怪物を閉じ込める「捕縛フィールド」を設定。駅や街を破壊しないよう、制作はJRに配慮されている。

   子どもだけでなく、大人までをファンにしたコンテンツだ。

西武鉄道オリジナルアニメ「ちちぶでぶちち」

   このほか、本書では全国に16社ある大手私鉄の中でもアニメとの関係が深い西武鉄道に1章を割いて取り上げている。

   複数の事件をきっかけに、より地域に密着した鉄道会社としての再生をめざした同社。沿線にはアニメ関連会社が多いことに着目、2008(平成20)年に「機動戦士ガンダム」の銅像が西武新宿線の上井草駅に設置された。

   東映アニメーション大泉スタジオがある練馬区も動き、「銀河鉄道999デザイン電車」が、2009(平成21)年から西武池袋線を中心に走り始めた。

   埼玉県の秩父市もこの流れに乗った。アニプレックス制作の「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」は西武鉄道が登場するアニメだ。そして、とうとう西武鉄道自らオリジナルアニメを制作した。25分間の作品「ちちぶでぶちち」である。訪日外国人を対象にしたものだった。

   このほかにも「新世紀エヴァンゲリオン」とJR西日本・山陽新幹線とのコラボ、「ガールズ&パンツァー」、通称「ガルパン」と鹿島臨海鉄道大洗鹿島線とのコラボの例を紹介している。「鉄道のもつフォトジェニックなビジュアルと信用力が、作品とファン、そして時に地域の人々を結びつける役割を果たしている」と、栗原さんは書いている。  コロナ禍で、運行本数の減少が始まった鉄道各社。乗客の減少に伴う収入減は避けられない見通しだ。鉄道以外の事業収入を増やすという観点から、今後ますます鉄道とアニメの関係は深くなるかもしれない。

「アニメと鉄道ビジネス」
栗原景著
交通新聞社
900円(税別)

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