西武鉄道オリジナルアニメ「ちちぶでぶちち」
このほか、本書では全国に16社ある大手私鉄の中でもアニメとの関係が深い西武鉄道に1章を割いて取り上げている。
複数の事件をきっかけに、より地域に密着した鉄道会社としての再生をめざした同社。沿線にはアニメ関連会社が多いことに着目、2008(平成20)年に「機動戦士ガンダム」の銅像が西武新宿線の上井草駅に設置された。
東映アニメーション大泉スタジオがある練馬区も動き、「銀河鉄道999デザイン電車」が、2009(平成21)年から西武池袋線を中心に走り始めた。
埼玉県の秩父市もこの流れに乗った。アニプレックス制作の「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」は西武鉄道が登場するアニメだ。そして、とうとう西武鉄道自らオリジナルアニメを制作した。25分間の作品「ちちぶでぶちち」である。訪日外国人を対象にしたものだった。
このほかにも「新世紀エヴァンゲリオン」とJR西日本・山陽新幹線とのコラボ、「ガールズ&パンツァー」、通称「ガルパン」と鹿島臨海鉄道大洗鹿島線とのコラボの例を紹介している。「鉄道のもつフォトジェニックなビジュアルと信用力が、作品とファン、そして時に地域の人々を結びつける役割を果たしている」と、栗原さんは書いている。 コロナ禍で、運行本数の減少が始まった鉄道各社。乗客の減少に伴う収入減は避けられない見通しだ。鉄道以外の事業収入を増やすという観点から、今後ますます鉄道とアニメの関係は深くなるかもしれない。
「アニメと鉄道ビジネス」
栗原景著
交通新聞社
900円(税別)