日本のウイスキーは「原酒」だけではない
日本のウイスキー造りは、世界5大ウイスキーの中で最も歴史が浅い。サントリーの前身である寿屋が1923(大正12)年、大阪府の山崎に蒸留所を建て、1929(昭和4)年に国産ウイスキー第1号を発売したのが始まりだ。スコットランドでウイスキー造りを学んだ竹鶴政孝氏の存在はあまりにも有名だ。NHKの朝の連続テレビ小説「マッサン」のモデルになった。
日本のウイスキーの売り上げのピークは1983(昭和58)年で、2007(平成19)年には最盛期の18%まで減少した。その後のハイボールブームや「マッサン」のおかげで、シングルモルトウイスキーは品薄になり、販売を停止した銘柄もある。
ウイスキーは熟成期間が必要なため、増産ができないのだ。そのため、「10年熟成」など年数を記載したものは休売となり、12年熟成は出荷制限されて潤沢に出回っていないという。価格も高騰している。
販売が増え、価格も上がり、いいこと尽くめのような日本のウイスキーだが、橋口さんは、「原酒混和率」という言葉を挙げ、問題点を指摘している。
原料から造った蒸留酒を「原酒」と呼び、その原酒が10%以上入っていれば、日本ではウイスキーとして販売できる。スコットランド、アイルランド、カナダでは「原酒」でなければウイスキーと名乗ることができない。
そのため、何が入っているかを見分けるには、ラベルをチャックする必要があるという。
「原材料の項目に『モルト』『グレーン』以外の名称(スピリッツ、醸造用アルコール等)の記載がある場合には、それらのアルコールが添加されているということです」
また、日本の酒税法では、ウイスキーの産地とラベル表記の規定がない。だから輸入原酒が使われていても「ジャパニーズ・ウイスキー」として販売されている。日本洋酒酒造組合は2016年にウイスキーの表示に関する特別委員会を設け、「ジャパニーズ・ウイスキー」の定義化に向けて議論しているが、結論は出ていないそうだ。
ウイスキーの原料となる大麦、小麦、トウモロコシによる違い、香味を出す「ピート」、蒸留、熟成、ブレンドなどウイスキーの生産法についても詳しく解説している。