二人の意外なアドバイス
第3章と第4章は上野さんと出口さんがそれぞれ「私はこう働いてきた」と仕事人生を振り返ってアドバイスしている。上野さんは「上司とは利害、部下とは信頼でつながる」、「仕事は自分で見つけ出すもの」と話している。
卒業生から脱サラの相談を受けるたびに、「ちょっと頭を冷やそうよ」と言ってきたという。「人並み以上の意欲と能力が自分にあると思わない限りは、裸で荒野に立つのはリスクが高いのです。これが私のリアリズム。私が『会社』を辞めなかった理由です」とも。
また、出口さんは、若い人にアドバイスをするとしたら、まず「早くあきらめろ」と助言するという。それは、「現状をまずはありのままに受け入れ、世の中とはこんなもんやと早くあきらめて、目の前の仕事に集中しろということ」だという。
日本生命に入社、一時は同期のトップで昇進したが、50代は子会社に出向という左遷を受けた。海外展開をめぐり、新しい社長と衝突したからだ。そして、60代になってライフネット生命を立ち上げた。
「好きなことはお金にならない」「置かれた場所で咲くということ」など、二人の働くことへの意識は驚くほど似ている。たまたま1948年生まれ、学部は違うが京都大学の同期生ということもあるのだろうか。それぞれユニークな仕事をしてきた二人の言葉は、これから就職しようという大学生や若いサラリーマンの参考になるだろう。
「あなたの会社、その働き方は幸せですか?」
出口治明、上野千鶴子著
祥伝社
1500円(税別)