コロナ禍をチャンスに日本の社会は変われるか?
妊娠、出産......。働く女性をめぐる問題について口火を切ったのは、出口さんだ。出生率が2.0まで回復したフランスの少子化対策を紹介している。女性が産みたいと思った時に産めるように経済的な補助をする、保育所の待機児童ゼロ、育児休業を理由にしたキャリアの中断やランクのダウンを法律で禁止した「シラク3原則」があるという。
フランス語を母語とする人口をある程度キープするために、子どもたちを増やそうという市民のコンセンサスが生まれて、「シラク3原則」ができたそうだ。
上野さんがドイツの手厚い児童手当にふれ、ドイツとフランスが人口政策に熱心なのは、「隣国同士で人口を競っているからです」
人口学者も人口政策もない日本の現状を二人は嘆いている。人口の動静は経済にもダイレクトに影響し、働き方にも大きく関係するからだ。
話は再びコロナに戻る。
上野さん「アフターコロナを考える時に思い出すのは、東日本大震災のあと、もう以前の世界には戻れないとどれだけの人が言っていたか。でももうすっかりあの時の記憶が消えかけています」
出口さん「よほどしっかり改革しないと元に戻りますね。だけど僕は、今回のコロナ禍は本当にいいチャンスだと思うのです。変われるかどうかにまさにこの社会の成熟度が試されており、日本の社会がこれから発展していくか衰退していくかの分水嶺になると考えています」
上野さん「おっしゃる通りです。どんな危機も、あたかもなかったかのように元に復することを『復旧』というんだそうです。テレワークがこれだけ普及したら、経済合理性でちゃんと動いてくれれば、今さらオフィスを都心に構える必要もないと学ぶはずなんですが」
出口さん「日本IBMの山口明夫社長は、テレワークを基本にして、自分もほとんど会社に行かないと明言していました。オフィスを住宅街に移すとまで言っています。こういうトップがいたら、企業は間違いなく変わります。こういった波及効果がどこまで及ぶか、ですね」
上野さん「変わらない企業が淘汰されるといいですね」