ほとんど通話しない若い人にはお得だが...
一見、「povo」はライバル2社より500円も安く、携帯電話値下げ戦争の最終勝者に浮上した感があるが、専門家はどう見ているのか。
ケータイ/スマホジャーリストの石川温(つつむ)氏は、自身のウェブサイト「KDDIのahamo対抗2480円プラン『povo』のカラクリ」の中で、こう解説している。
「povoは、ahamoやSoftBank on LINEよりも月額500円安い。ただし、ここには『カラクリ』が存在する。他社には月額2980円に『1回5分まで国内音声通話かけ放題』が含まれているが、povoには含まれていない。povoユーザーで1回5分まで国内音声通話のかけ放題が必要な人は、月額500円のトッピングをつける必要がある。つまり、データ容量20GBで1回5分まで国内音声通話かけ放題という内容で3社の新料金プランを比較すると、どれも月額2980円の3社横並びになるというわけだ」
「ただ、1回5分のかけ放題がいらないユーザーとすれば、他社と比べて500円安く済む。povoの最大の特徴は『トッピング』という考え方だ。月額2480円で20GBというシンプルな料金設定に加え、自分に必要なサービスを自在にネットで追加、トッピングしていくことができる。『週末、旅行に行くので、データを使い放題にしたい』というのであれば、200円を支払うと24時間、データ通信が使い放題になる。ピザやカレーのように、ベースとなる料理に自分の好きな具材を自由にトッピングする感覚に近い」
こうした料金プランは、海外の携帯電話会社で提供されており、タイの携帯電話会社は、YouTubeやFacebookなどに接続する際のデータ容量が安くなるトッピングをユーザーが選ぶことができるという。石川氏は、KDDIもこうしたユーザーのニーズに合わせ、自在にトッピングできる世界観を目指すようだとしている。
ネットでは、こんな意見があふれている。
ITジャーナリストの篠原修司氏は、こう投稿した。
「povoは5分かけ放題(+500円)をつけると2980円となり、3社横並びのように見えますが、電話をしない層にとっては他社よりも500円安い魅力的なプランです。携帯電話の通話料金は30秒で20円とそれなりに高い価格設定のため、『携帯電話からあまり電話をかけない(基本的にLINEで済ます)』という人は多く、それらのユーザーからするとahamoやSoftbank on LINEよりも安く利用できます。そして200円で24時間データ使い放題という独自のトッピングはメリットです」
フリーランスジャーナリストの山口健太氏も、こう評価した。
「特徴は『トッピング』機能です。24時間の使い放題トッピングは200円となっており、しかもテザリング(スマホなどのデータ通信を利用して、パソコンやタブレット端末、ゲーム機器などをインターネットに接続すること)も対象とのことから、週末の動画視聴やオンライン授業など特定の日だけ無制限に使いたい人に最適といえます」
ほとんど通話をしない人からも称賛の声が。
「通話が必要ないという人や、もっとデータが欲しい人など、今はさまざまな使い方が本当あるので、選べるという点ではとても良いと思いました。5分以内なら値段が同じではインパクトが少ないので、500円マイナスで通話部分をオプション扱いにしたのは賢明です。他の2社も合わせてきたら結構厳しい状況になりそうです」
それなりの評価がある一方、「結局、今回もサブブランドの発表でメインプランの値下げではなかった」とガッカリする人が多かったのは確かだ。
「なぜ各社ともにメインブランドでは値下げせずに、新ブランドで誤魔化すのだろうか? マスコミの報道の仕方にも問題がある。以前から各社、『新プラン』の発表なのに『値下げ』と書く。メインブランドで単純に値下げしてくれれば、そのキャリアメールを使えるし、面倒な乗り換え手続きをしなくてもいいのに」
「大手3社それぞれ格安プラン(ブランド)を提供、で幕引きを図りたいといったところだろうか。単純に現状の携帯電話料金の値下げを要望する菅内閣の意図からずれているが、総務省はどう反応するのか。個人的には今の契約プランをただ値下げしてくれることを期待していたのでガッカリだ」