2021年はパンデミック後の世界に入る! 「日本は優位」菅政権がパニックに陥らなければ、だが...【世界を占う】(小田切尚登)

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   新型コロナウイルスの感染拡大の恐怖にさらされた2020年。世界は大きく混乱し、動揺した。

   しかし、パンデミックの後には明るい時代が来るという。14世紀のペストの大流行では欧州の人口の半分、世界の3人の1人が死んだとされるが、それが落ち着くと、人々は道で喜び踊りあったという。

   1918年から1919年に大流行したスペインかぜは1億人以上の命を奪ったといわれるが、それが落ち着いた1920年代には一大消費ブームが訪れた。ラジオ、電話、自動車が一般に広まり、アメリカの時代が訪れた。つまり、2021年の世界経済は明るいということだ。

  • 2021年の世界経済は明るい!
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「勝ち組」がGDPを押し上げるアメリカ

   2021年の世界はどうなっていくだろうか――。私は基本的には楽観的である。新型コロナウイルスについては、感染の傾向を見ると平常に戻っていくフェーズに入った、というのが多くの専門家の見方である。

   われわれは、これから徐々にパンデミック後の世界に突入していくことになる。

   アメリカの2021年は明るい年になりそうだ。アメリカでは2020年は動乱の年だった。同国のGDP(国内総生産)は第1四半期(20年1~3月期)がマイナス5.0%、第2四半期がマイナス31.4%(4~6月期)、第3四半期(7~9月期)が33.4%と乱高下した。

   アメリカはもともと変動の激しい国であり、景気が悪くなると失業者が短期間にどんどん増えるが、良くなると人々の収入が増え、消費が好転する。2021年はコロナ禍の呪縛から解き放たれて、消費者が買い物や旅行に勤しむ傾向が見えてくるだろう。

   アメリカのGDPの7割は個人消費による。なかでも富裕層の消費の影響が大きい。コロナ禍で「勝ち組」と「負け組」の差が開いたところは日本と同様だが、アメリカの金持ちの資産はケタ違いだ。

   ブルームバーグによると、2020年3月中旬から12月22日までに、アメリカでは新たに56人のビリオネアつまり10億ドル(約1030億円)以上の純資産を持つ人が誕生したという。大半がIT企業の株価が上昇したために増えたものだ。

   アメリカでは貧富の差が広がるほど、経済が成長するという傾向がある。一般人が少しずつ現金を手にしても、消費は大して増えないが、金持ちがもっと金持ちになると消費が一気に増え、それが景気を大きく刺激する。納得しがたい面があるが、それが経済の実態である。

   アメリカでは、2020年はIT企業の一人勝ちの様相だったのが、2021年には製造業なども伸びていくことが予想される。そうすると地域の雇用も賃金も改善され、大都市圏以外の地域の経済が活性化する。

   そして世界最大の米国経済が良くなっていけば、世界の他の全ての地域にプラスの影響をもたらす。米国が私を2021年の経済について楽観的に思わせてくれる最大の要因である。

習近平氏の「舌先三寸」で決まる中国のゆくえ

   中国については、2020年の時点で主要国で唯一プラス成長を遂げており、その勢いで2021年も好調を持続するだろう。欧米の経済が復活していくと、その恩恵も受ける。

   ただし、中長期的には中国には、いろいろと難しい面がある。たとえば、習近平氏によって経済のコントロールが強化されていく中で、新興企業が自由に活動するのが難しくなってくる。

   少し前にジャック・マー(アリババグループの創業者)が中国政府に厳しく糾弾された件などが典型的な例だが、こういうのは決して経済にプラスにならない。一方で金融やインフラなどで存在感の大きい国有企業は官僚的な経営になりがちで、展望が見いだしにくい。米中の通商関係がバイデン新大統領のもとで、どう変わっていくかも重要である。いずれにせよ習近平氏の「舌先三寸」で決まる部分が大きく、予測は難しい。基本的には良さそうだが注意も必要、というところだ。

   ヨーロッパはコロナで深刻な打撃を受けているが、2021年には上向いていくであろう。EU(欧州連合)については、2020年末にBREXIT(英国のEU離脱)と中国との投資協定という二つの大きな経済外交の成果が出た。

   特に中国との通商の促進は経済的に大きなプラスになり得る。これは中国の孤立化を目指す米国(そして日本、インド......)にとっては問題であるが、ヨーロッパにとって中国は何より通商の相手であり、地政学的に大きな脅威と見られていないので、当然の動きであろう。ちなみに、ヨーロッパにとっての最大の脅威はロシアである。

   ただ、ヨーロッパは政治的には混乱が続くことが予想される。2021年9月のドイツの選挙ではおそらく波乱が起きず、メルケル首相の後任に同じキリスト教民主同盟から選ばれそうではあるが、2022年のフランスの大統領選挙では、右派の国民連合のマリーヌ・ル・ペン氏が現大統領のマクロンを破って当選する確率がかなりある。そのほかにもヨーロッパには政治的な不安要因を抱える国がいろいろあり、心配のタネとなっている。

欧米より圧倒的に感染者数が少ない日本

2020年の日本経済はコロナ禍の影響で大きくやられてしまった(写真はイメージ)
2020年の日本経済はコロナ禍の影響で大きくやられてしまった(写真はイメージ)

   最後に日本だが、2020年には残念ながら経済は大きくやられてしまった。

参考リンク:「コロナ禍の2020年 欧米に比べて感染者少ない日本、それなのに経済は......(上)」(J-CASTニュース 会社ウォッチ 2020年12月31日付))

コロナ禍の2020年 欧米に比べて感染者少ない日本、それなのに経済は......(下)」(J-CASTニュース 会社ウォッチ 2020年12月31日付))

   しかし、欧米よりも圧倒的に感染者数が少ないので、その強みを上手に活かしていければ、経済面でも優位な立場に立てるはずだ。欧米は日本よりずっと深刻な状況にあり、ロックダウンなどの極端な政策をとったりしているので、全面的な回復にはより長い時間がかかってくる。

   菅義偉首相が新型コロナウイルスに対してパニックに陥らず、現実的な対処を続けていければ、日本の優位性は今後も保たれるだろう。(小田切尚登)

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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