勝ち組と負け組の格差拡大を止めるには!? 「自分でしかできないなにかを身につける」【2021年を占う】(小田切尚登)

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肉体労働や心を使う仕事が軽視される時代

肉体労働や心を使う仕事が軽視される時代に......
肉体労働や心を使う仕事が軽視される時代に......

   男女間の格差も拡大している。女性は伝統的にサービス産業の対人関係の部分の多くを請け負ってきたが、コロナ禍でその分野の雇用がしぼんでしまった。このところ女性の失業率が特に上昇してしまい、大きな問題となっている。

   業種間の格差と男女間の格差とは密接に関連している。

   残念ながら今後コロナが収束しても格差が拡大していく流れは続いていくだろう。理由は単純だ。IT化により、知的労働の生産性がどんどん上がっていくのに対して、対人関係を中心とする仕事の効率改善には限界があるからだ。

   100年前の美容師と今の美容師とでやっている仕事の内容は大差がない(誤解のないよう書き加えると、技術やセンスなどは年々向上していると思うが、ITの活用は進んでいない、という意味)。

   デイビッド・グッドハートは近著「Head, Hand, Heart(頭、手、心)」の中で、現代は頭脳労働が非常に高く評価され、肉体労働や心(ハート)を使う仕事が軽視される時代である、と述べている。その傾向は、AI(人口知能)の本格的な導入によってますます強まっていくだろう。

   いずれホワイトカラーの仕事の多くもAIに取って代わられることになり、人間に残されるのはAIに指示するような仕事か、さもなくば定型化に向かないもの、たとえばアートや音楽といったある種のパーソナルなサービスといったものに限定されてくるのかもしれない。

   そこまで行くのにはまだまだ時間がかかるであろうが、我々は個人としては「自分にしかできない何か」を身に着けていくことが、今まで以上に大事になっていくことは間違いない。(小田切尚登)

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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