肉体労働や心を使う仕事が軽視される時代
男女間の格差も拡大している。女性は伝統的にサービス産業の対人関係の部分の多くを請け負ってきたが、コロナ禍でその分野の雇用がしぼんでしまった。このところ女性の失業率が特に上昇してしまい、大きな問題となっている。
業種間の格差と男女間の格差とは密接に関連している。
残念ながら今後コロナが収束しても格差が拡大していく流れは続いていくだろう。理由は単純だ。IT化により、知的労働の生産性がどんどん上がっていくのに対して、対人関係を中心とする仕事の効率改善には限界があるからだ。
100年前の美容師と今の美容師とでやっている仕事の内容は大差がない(誤解のないよう書き加えると、技術やセンスなどは年々向上していると思うが、ITの活用は進んでいない、という意味)。
デイビッド・グッドハートは近著「Head, Hand, Heart(頭、手、心)」の中で、現代は頭脳労働が非常に高く評価され、肉体労働や心(ハート)を使う仕事が軽視される時代である、と述べている。その傾向は、AI(人口知能)の本格的な導入によってますます強まっていくだろう。
いずれホワイトカラーの仕事の多くもAIに取って代わられることになり、人間に残されるのはAIに指示するような仕事か、さもなくば定型化に向かないもの、たとえばアートや音楽といったある種のパーソナルなサービスといったものに限定されてくるのかもしれない。
そこまで行くのにはまだまだ時間がかかるであろうが、我々は個人としては「自分にしかできない何か」を身に着けていくことが、今まで以上に大事になっていくことは間違いない。(小田切尚登)