新型コロナウイルスに明け暮れた2020年が終わった。これほどまでに経済が大きく混乱すると、その時その時を凌ぐことに精一杯になってしまい、先を見通すことを疎かになりがちになる。
しかし、大きな岐路を迎えた今こそ、将来について真剣に考えていくべき時であろう。コロナ禍が経済面で我々に突き付けた最大の問題は、「勝ち組」と「負け組」の格差が広がってしまったことだ。
勝ち組の代表選手はIT業界
勝ち組の代表選手はIT業界である。人々がネットに頼るようになったため、アップルやアマゾンをはじめ、IT企業の多くは我が世の春を謳歌している。コロナによってITの力が再認識され、それがIT化のスピートを早めることにつながった。今後IT化がさらに進んでいくことは間違いない。
2020年の各業種の業績を見てみると、ホームセンターやドラッグストアなどの業種は自宅重視、健康重視の波に乗って好調だった。またブランド力が強い、いくつかの小売企業(マクドナルド、コストコなど)も良かった。
これには消費者がコロナ禍で、冒険せず少数の信頼するブランド店でまとめて買い物をするようになったことが影響している。
対照的に苦しいのは旅行やホテル、飲食、エンタメ、趣味やスポーツ、衣料品などの分野だ。その中でもよく見ると濃淡があって、たとえば衣料品や服飾品でも、LVMHやエルメスなどの高級ブランドのいくつかは富裕層の購買力が戻って絶好調である。
つまり、企業がどういう戦略をとるかで状況を打破できる可能性があるということだ。
一方、労働者間での格差拡大が起きている。いわゆる頭脳労働者はITを使って遠隔で仕事を比較的やりやすい環境にあるが、介護、販売、美容・理容、料理などの仕事は、主に人に直接サービスを提供する種類の仕事なので、IT化には限度がある。
そういう業務は一般的に賃金が低めであることも手伝って、新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの人が厳しい状況に置かれるようになってしまった。
英エコノミスト誌は2020年12月19日号で、次のように述べている。
「米国では年収10万ドル以上の仕事の60%は家でできるが、4万ドル以下の仕事のうち家でできるのは10%に過ぎない」