日立製作所の改革がひな型に
企業では、少子高齢化やテクノロジーの進化で新型コロナウイルスの流行以前からジョブ型雇用への転換を目指す動きが始まっており、日本経済団体連合会も積極的に推進。中西宏明会長は2019年5月に「終身雇用は限界にきている」と述べて、日本型雇用からの脱却を掲げ改革を進めている。
「そのタイミングで新型コロナの感染が拡大。緊急事態宣言による外出自粛要請は、テレワークという半強制的な働き方改革をあらゆる企業に迫った」と著者という。
ベンチャーは一斉にオフィスの縮小・移転へと向かい、大企業はというと、「本社移転」を合わせ「ジョブ型雇用」導入へと一斉に動き始めた。本書で紹介されているのは、富士通、日立製作所、KDDI。
富士通は、2020年7月6日に「オフィスの面積を半減する」と発表。当初は「面積半減」がクローズアップされる形で衝撃的に伝わったが、その計画を詳細に検討すると「働き方改革先進企業」としての戦略が伝わってくる、と著者。本書でその内容が詳しく解説されている。
発表では同時に人事制度を「ジョブ型」への移行も述べられている。2020年4月に幹部社員約1万5000人について導入済みで、対象を広げる計画を明らかにした。
「これまでオフィスで向かい合って座り、雰囲気で仕事を分担していたがこれからはできない。テレワークを前提とした働き方と、役割をきちんと明文化して共有するジョブ型の人事制度は非常に相性がいいと考えている」
という富士通担当者の談話が引用されている。
日立製作所が2020年5月26日に、新たな働き方についてオンライン会見で発表。同社は国内製造業でトヨタ自動車に次ぐ従業員数を抱えており、本書で引用されている、ある製造業人事担当幹部の発言によれば「日立の方針は日本の大企業の大きな方向性を決定付けたと言っても過言ではない」という。
日立は2021年4月から新しいルールによる働き方を適用。在宅勤務ができる職種の従業員は週に2~3日は在宅勤務を目指し、加えて、富士通と同様に、人事制度のジョブ型シフトを進めている。
「さよならオフィス」
島津翔著
日経BP
税別900円