新型コロナウイルスの感染大爆発が止まらない。2021年1月7日、東京都の新規感染者がついに2447人と2000人を突破。国内感染者も7000人をオーバーした!
政府は同日、首都圏の1都3県に緊急事態宣言を発令した。大阪府の吉村洋文知事も宣言発令を求める構えだ。
こんななか、メディアの一部とネットでは、
「これで東京五輪の開催は完全に終わったな」
という声が広がっている。
スポニチが3面ブチ抜きで「中止を!」と主張
「21年も五輪危機 今日緊急事態宣言・変異種・世界で感染爆発」
「東京新規感染初1500人超え・国内最多の6004人・世界感染者1億人目前」
「『すでにやると決めている』も...『影響受ける』――加藤官房長官」
という、おどろおどろしい見出しで、1面から3面までブチ抜きで「五輪危機」を報じたのはスポーツニッポン(1月7日付)だ。
これまでならスポーツ紙が五輪開催に悲観的な記事を掲載することは、まずなかった。スポーツ紙にとって、オリンピックは部数拡大と広告費増大が望める格好のチャンスのため、ぜひとも開催してほしいところだからだ。
ところが前文に、
「東京五輪は、パラリンピックも合わせ開催は今、危機的状況にひんしている」
とうたうなど、異例の紙面づくりだ。
1面には、今夏に予定される東京五輪開催の是非を問う「本紙緊急アンケート」を掲載。結果は、開催に「賛成」がわずか18%、「反対」が70%、「どちらでもない」が12%と、圧倒的多数が開催に反対だった。
反対理由として、
「これ以上、負担が増える医療関係者の気持ちを考えて」
「200日を切った段階でこの状況では無理にやる必要はない」
などがあがった。
2面では、白血病と戦いながら練習を続けている競泳の池江璃花子選手(20)が、1月9~10日に出場予定だった今年の初レースを、急きょコロナ感染を恐れて欠場するなど、各競技のコロナ禍の影響を特集。3面では、同紙の藤山健二編集委員の「感染の予防に全力を尽くし、その上で拡大が収まらなければ中止を」と訴える解説記事を掲載した。
藤山氏は、
「選手のために開催してあげたいという気持ちは誰もが共有するが、現状は極めて厳しい。この状況で開催を強行することは、スポーツで何より大切な公平性を損ない、五輪本来の意義を失わせることになる」
と強調した。
パラリンピックも合わせれば、開催期間中に1000万人を超す人々が東京に集結する。そのすべてにPCR検査を行い、ワクチン接種することなど不可能だ。また、いち早く国民にワクチン接種などの対策ができた大国の選手だけが有利になるなら、それはもう五輪とはいえない。
そして、政府や東京都、五輪組織委員会などにこう訴えるのだった。
「今すぐ中止すべきだと言っているわけではない。だが、どうしても感染が収まらないときは、潔く中止を決断すべきである。政府と東京都の駆け引きで発令が遅れたようにしか見えない今回の緊急事態宣言を巡るバタバタを見ると、いざという時に決断を下す人たちが本当に正しい判断ができるのか、残念ながら一抹の不安を感じざるを得ない」
と結んでいる。
朝日新聞(1月7日付)は読者投稿の「声」欄で、神奈川県の男性(79)の「東京五輪 延期を決断する時期だ」という投書を掲載した。
「東京五輪まであと6か月。各国から来日する選手や関係者、観客のみならず日本国民の健康を守る策を政府は練っているのか。菅義偉首相は『人類が新型コロナに打ち勝った証』の大会にすると語ったが、政府の過去1年の政策の経緯を見るに、じつに危うい。菅政権には荷が重いと言わざるを得ない。競技者には大変気の毒ではあるが、今こそ政府の決断のしどころだ」
と訴えた。
社説で「断固開催すべし!」と檄を飛ばす産経
一方、「断固開催すべし!」と社説で檄を飛ばすのが、産経新聞(1月6日付)の主張(社説)「東京五輪 今こそ『聖火灯す』覚悟を 後世の指針となる足跡残そう」である。
「新型コロナ変異種の国内流行も懸念される。五輪開催に批判があるのはやむを得ない」
としながら、
「思い出してほしい。2013年に東京大会を勝ち取ったときの高揚感...。『おもてなし』は流行語になり、国民の意識は外に向かって開かれた。五輪・パラには社会を変える力がある。アスリートはもっと誇りを持ってほしい」
と選手に呼びかけた。
産経新聞にとって、五輪代表選手たちの開催を望む意思表示が身勝手と受け取られることを懸念するムードが広がっていることが残念でならないようだ。こう続ける。
「五輪開催は社会経済活動の活性化の延長線上にある。社会を覆う閉塞感を打ち破るうえでも、アスリートが前傾姿勢を示すことには何の違和感もない。スポーツの力を体現する人が先頭に立ってこそ、五輪開催論も説得力を伴う。スポーツの価値を守り抜く覚悟を見せてほしいのだ」
と、もっぱら選手にばかりハッパをかけているが、肝心の東京大会での新型コロナウイルス対策を、産経新聞はどう考えているのか。
「選手や観客の健康や安全が最優先されるべきなのは言うまでもない。960億円を充てる東京五輪のコロナ対策費は、国と都が分担する。感染防止策など必要な支出を惜しんではならない」
と述べるにとどまった。そして最後は、
「聖火は世界の国々にとって『希望の火』であり、日本が必ず灯すという意思を発信し続ければ、世界の賛同と協力は得られよう。『日本だからこそ開催できた』と後世の指針になるような足跡を残せれば理想的だ。日本の総力を挙げて開催準備を進め、興奮と感動の大会を作り上げたい」
という「精神論」で結ぶのだった。
(福田和郎)