なんと約1600人に! 東京都の新型コロナウイルスの新規感染者が2021年1月6日、一気に1591人に達した。全国の感染者も初めて6千人を超えた。そんななか、菅義偉首相は東京都と埼玉、千葉、神奈川の1都3県の首都圏に緊急事態宣言を、1月7日に発令する。
この感染大爆発状況を招いたのは、ひとえに飲食店での会食だとして、知事らの営業時間短縮要請に従わない店には「店名公表」という「罰」を与える方針だ。
ネット上では、
「ガースー首相や二階俊博幹事長自ら会食ルールを守らないのに、どの口が言うのか!」
という怒りが殺到している。
「GoToの破たんだ。飲食店に罪はありません」
ネット上には、こうした政府の強硬な姿勢に対して批判の声が殺到している。
フードジャーナリストの山路力也氏は、飲食店に罪はないと訴えた。
「飲食店がクラスター発生源のようなイメージが強くありますが、飲食店の多くは感染拡大防止に留意した営業を行っており、実際そのようなお店がクラスターになった例はほとんど見られません。飲食店側の対応よりもはるかに重要なのは客側の飲食の仕方にあります。マスクもせずに至近距離で騒いだり、回し呑みや回し食いをしたり...。これではいくら飲食店が感染防止策を行っても、まったく意味がありません。客側の行動が変わるだけで感染拡大は防げます。政府は飲食店への対策だけではなく、お客にも正しい飲食店の利用法などを強くメッセージして欲しいと思います。飲食店に罪はありません」
エコノミストで経済評論家の門倉貴志氏は、GoToキャンペーンの破たんを指摘した。
「今回の緊急事態宣言は、時短要請の前倒しなど飲食が中心となり、同時にGoToキャンペーンの停止も継続する内容だが、これは『逆GoToキャンペーン』と言ってもいいぐらいに180度異なる政策で、政府自らGoToキャンペーンの強行が第3波の感染拡大要因の一つになったことを認めたも同然だ。GoToの最終的な損得勘定を見れば、観光・飲食事業者にとっても消費者にとっても経済的な助けにならなかったばかりか、緊急事態宣言に伴う巨額の経済損失を発生させ、かえって景気の回復を遅らせる結果に終わった」
また、原田隆之筑波大学教授(心理学・保健学)は、こう指摘した。
「行動科学的にみて『罰』は行動変容に対して望ましい方法ではありません。日本がこれまでコロナ対策でやってきたことは、いろいろと批判はあるにせよ個人の自主性と公共心を信頼して、自主的な行動変容を促す方法でした。今回の緊急事態宣言も、罰ではなく報酬が伴うようにすべきです。時短要請に対しては、今のところ適切な補償しかありません。そして、少しでも先が見えるビジョンを示すことです。わが国は権力的に感染を抑え込むのではなく、協力してコロナに打ち勝つことを目標にしていたのではなかったでしょうか」
店名公表という「罰」を与えることに対しては嵐のような反対意見が巻き起こった。それは政治リーダーたち自らが会食ルールを守らないからだ。
「自らが国民に向けて行った大人数での会食自粛要請中に、まともな感染対策なしで老人ばかりの会食していたくせに、よく言うよって感じ。最近の感染爆発は、総理だって大人数で会食したという事実が、国民の行動に悪影響を及ぼしたことも一つの大きな要因だと思います」
「飲食店に罰を与える前に、政府は大人数会食の二階幹事長的な屁理屈『会食を目的にやっていない。意見交換を目的にやっている。全く無駄なことをしているわけではない』の類はまかり通りません! と釘をさしておいてほしい」
「自粛にも応じず、忘年会や政治資金パーティーなどをした国会議員と地方議会議員の名前も全員公表してください!あなたたちは忘年会をやらなくても生活には困らないけど、飲食店の方々は生活がかかっているのですよ!」
「村八分に応じない気概のある店を応援したい」
「現代の魔女狩りだ」という声も多かった。
「『要請』なのに応じない場合は公表して袋叩きにしますよ、ってこと? まさに村八分の文化ですね。『部活の朝練は〈自主〉練習なので強制ではありません』『PTAの役員は〈希望者〉にやってもらっています』『〈希望〉退職者の募集なので退職強要ではありません』『時短〈要請〉なので強制ではありません』......。子供の頃から叩き込まれた空気を読んで行動する日本社会は、今日もスムーズに回っていますよ」
「パチンコ店→ライブハウス→接待を伴う飲食店→ふつうの飲食店。現代の魔女狩りはどこまで続くのか? 自分の仕事には関係ないと思っていても、仕事は相互関係にありますから、飲食への締め付けは全体へも影響します。次は私やあなたの番かも知れません」
「何でもかんでも皺寄せが飲食店のみにいっているのが気になる。その前に大企業でテレワークが可能であるにもかかわらず、特に理由もなくテレワークをさせてないところも公表すべきでは?」
飲食店への応援エールが非常に多かった。
「アメリカでは州の営業規制に反対して営業を続けた理髪店の店主が英雄扱いされている。ライセンスをはく奪されても、訴追されても、営業を続けている。合衆国憲法に営業の自由が書かれているからだ。裁判にも勝ち、ライセンスも戻ってきた店主はまさに英雄だとか。店名を公表すると脅迫されて罰則のない要請に応じる日本の飲食店主たちは、どれだけいるのだろうか」
「パチンコ店と同じ。公表は逆効果だよ」
もっとも、「店名を公表しても効果がないのでは」と、指摘する意見も多かった。
「店名を公表してどうするの? パチンコ店の時と同じで、かえって繁盛するよ。パチンコ店で裏目に出たのに学習能力ゼロだね」
「これまでも要請に従わなかった店は、店名を公表されても痛くも痒くもないよ。お店側はタダで宣伝してもらえるので好都合じゃないかな」
また、こんな意見もあった。
「飲食店をいじめる前に、スタジオに大勢で集まり、アクリル板だけでマスクなしで喋りまくって唾を飛ばすテレビ出演者に、マスクをさせて下さい。どうしてあの人たちはマスクなしでいいのか、子供に説明できません。あんなにテレビでゆるゆるなら、国民は大体のことは何でもオッケーだと思いますよ」
(福田和郎)