コロナ禍に揺れたドル円相場は、緩やかな円高に向かっている。2021年は、その流れが続いていきそうだ。
マネックス証券チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は、2021年のドル円相場は90~95円という、いわゆる「超円高」水準まで下落すると予想した。
円高ドル安の背景に株高?
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2020年の米国の金融政策は大規模な金融緩和策に舵をとった。また、財政支出を大幅に実施したことで相対的にドル安が進みやすい展開となった
。その結果、コロナショック後に大きく価格を戻した株式市場とは反対に、ドル円相場は緩やかなドル安円高で推移した。
◆ ドル円2020年のチャート
昨年3月のコロナショックで、瞬間的に1米ドル=101円まで落ち込む場面があったものの、長きにわたり105円以下で推移することは2016年以来となった。
さらに、11月の米大統領選挙で民主党のジョー・バイデン氏が勝利を収めた(※トランプ大統領は敗北を認めず)ことから、財政拡大の思惑が加速。協議途中の大規模な経済政策に加えて、さらなる追加対策を打ち出すことから、ドル安の進行は止まりそうにない。
また、米国の10年債利回りとドル円の金利差にも注目。
3月には相関性のあった米国の10年債利回りだが、その値動きは開いたままとなっている。これが是正されると、ドル円相場は1ドル=95円程度まで下押しする可能性があるという。
このかい離の理由として、金利を無視した株高が考えられることから、新型コロナウイルスという異次元の相場が到来したからこその値動きといえそうです。
注目は豪ドル
マネックス証券の吉田氏は、この米ドル安の波の中で注目なのが、豪ドルだという。コロナショックでは大幅安となった豪ドルだが、その後は対ドルで30%も上昇している。対円では、一時59円とリーマン・ショック以来となる歴史的安値まで下落したが、12月31日時点で1豪ドル=79円まで上昇するなど、強さが目立っている。
◆ 2020年の豪ドル円チャート
リーマン・ショック後に、豪ドル円は1豪ドル=100円まで上昇したことから、今後も強い動きが続く可能性がある。2020年の高値を更新していることから、次の節目は82~84円付近だろうか。
住宅指標を見ると、第2四半期(7~9月期)から大きく改善されており、第3四半期(10~12月期)の住宅価格は予想より大きく上昇。コロナの影響も、日本と同様に北米やヨーロッパと比較すると、その「痛手」が軽い状況も評価できます。
米ドル円相場が1ドル=100円割れとなった時には、連れ安となる可能性が高そうですが、そういった場面では買われやすい通貨となりそう。
豪ドルはかつて高金利通貨として人気だったことから、仮に金利を引き上げるようなことがあれば、日本人投資家から支持され、飛躍の1年となるかもしれない。(児山将)