日本証券業協会の「相場格言集」に、「売り買いは腹八分」がある。
この格言は二つの意味を持っていて、一つは「最高値で売ろうとか、最安値で買おうとか」いう気持ちへの「戒め」であり、いま一つは株式相場に向ける資力は適当にとどめ、決して全財産を投入するな、という教え。株式を売買するときには、常に心がけている。
初めて年初来高値で売れた!
2020年11月の米大統領選で、ジョー・バイデン前副大統領が次期大統領に選出された。正式には今年1月20日の就任になるが、不透明感が和らいだのは確かだ。米大統領選直後の11月6日の東京株式市場で2万4325円(終値)と、バブル後の高値(2018年10月の2万4270円)を更新。その後も上昇を続け、大納会の12月30日には2万7444円17銭の高値を更新して終えた。
昨年は新型コロナウイルスに世界中が振り回される1年だった。12月には感染第3波に加え、変異種が現れたものの、米製薬大手のファイザーのワクチン接種が欧米で本格的に開始され、実用化(副作用の懸念は残るが)の段階に。世界は「アフターコロナ」に向けて動き出したようにみえる。現在の株高は、こうした要因を背景にしたものだろう。
この機に、保有していた株式を、いくつか売却した。2020年11月25日にナブテスコ株を、1株4200円で100株を売却(売却益11万円、残り300株を保有)。さらに12月18日に、デンソー株を5980円で100株売却(売却益16万6000円、 残り200株保有)した。
29日には、ナブテスコ株を4570円(年初来高値)で100株売却(売却益14万7000円)した。「売り買いは腹八分」を心がけ、深追いせずに取引してきたが、初めて年初来高値で売り抜けた。
11月末から12月にかけて、300株売却で42万3000円の売却益を得た。これら売却資金で、2021年に株価上昇が期待される銘柄を取得することにした。
狙いは「節分天井」後の「彼岸底」!
株式投資に、「節分天井彼岸底」の言い伝えにあるように、株価は節分の時期(2月上旬)に高値をつけて、彼岸の時期(3月中旬)に安値をつけるという傾向がある。なので、年末に売却した資金は「彼岸底」に向けての購入に備えて、手元に置くことにした。
そこで2021年に株式を購入するにあたり、考えた銘柄は......。
(1)コロナ禍で大きなダメージを被っている業種で、コロナ終息に道筋がつけば、業績回復、株価上昇が見込まれる銘柄として、日本航空(JAL)がある。今期の配当は見込めなさそうだが、現在の株価は割安と考えている。
(2)GDP(国内総生産)第2位の中国市場の景気回復による恩恵をいち早く受けると考えられる自動車関連として、ワイヤーハイネス(電源供給や信号通信に用いられる複数の電線の束と、端子やコネクタで構成された集合部品)の「住友電工」や、欧州やインドで想定以上の回復をみせる2輪車の「ヤマハ発動機」、オイルシールの「NOK」を考えている。
(3)大日本印刷は、半導体製造関連のフォトマスク(露光工程で回路を焼き付ける原盤)にも注目。12月11日に2014年5月以来、約6年半ぶりの安値(1853円)をつけた。長期的にみても安値圏と考えている。
(4)11月以降の株価上昇による証券会社の業績改善を考え、「野村ホールディングス」の購入を検討したい。
これらの銘柄から、再投資を考えている。(石井治彦)
プロフィール
石井治彦(いしい・はるひこ)
投資歴25年。「現物株式取引」と「長期投資」が基本姿勢。情報源はもっぱら会社四季報や日本経済新聞、経済誌など。また、株主総会やIR説明会には、できるだけ顔を出すようにしている。東京都出身。