「漁師は潮を見る」という相場格言がある。
日本証券業協会の相場格言集によると、「経験豊かな漁師なら、気象のほかに潮流の微妙な変化を読み取って、出漁の機会をつかむものだ。株式投資も同様である。経験をつめば、ちょうど潮が満ちてくるのを感じるように、上げ相場の到来を予知できるようになるという」とある。
そして、さらに「むろんそれは、単なるカンではなく多種多様の指標や材料を的確に分析した結果というべきだろう。同じ優良株でも、やはり買い時を誤ると結果は思わしくないものだ」と書かれている。
地球温暖化問題の本命「水素」銘柄に着目
2020年の株式相場は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や休業要請などによる景気後退があったとはいえ、12月29日の日経平均株価は年初来高値の2万7602円52銭、大納会の30日終値で2万7444円17銭を付け、バブル崩壊後の高値を更新している。
日本経済はバブル崩壊後の失われた30年を、スピード感を持って挽回することが求められている。その波が、2021年も続くことを期待したい。
とはいえ、現在わが国は、新型コロナウイルスの感染第3波や少子高齢化、地球温暖化などの環境問題に、産業界ではデジタルトランスフォーメーション(DX)など、多くの問題を抱えている。
そうしたなか、10月に発足した菅義偉内閣は、温暖化ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする目標の達成に向けて、規制改革などを通じた投資拡大で技術革新を目指す方針を表明した。株式市場では、地球温暖化問題の「本命」と見られる水素関連銘柄に注目が集まっているようだ。
そこで、岩谷産業に着目した。
株式を投資するうえで、地球温暖化問題は、主要なテーマの一つと考えていた。いわゆる、ESG投資の「E」だ。なかでも、「水素エネルギー」の活用には、トヨタ自動車の燃料電池車「MIRAI」に見るように、有望ではないかと考えていた。
今年はコロナ問題で中止となったが、岩谷産業が2018年4月に開催した、第12回「イワタニ水素エネルギーフォーラム」には参加もした。内容は難しいが、当日配布された資料を何度か読み直したり、その後に水素関係の新聞記事などを読んだりするうちに、なんとなくイメージはついてきた。
菅首相が後押し! 「脱炭素社会」目指す
岩谷産業の株価をみると、今年9月から上り調子に。12月30日現在で1株当たり6360円。年初来安値を付けた3月17日の3260円から約2倍も急騰した。
水素エネルギー関連企業は、いよいよ実用化に向かって動き出している。今後もテレビや新聞などのマスメディアでは、「水素エネルギー」関連のテーマは、取り上げられる機会が多くなると思う。
なにしろ、菅首相が「脱炭素社会を目指す」「温暖化ガスの排出量を抑える」と、高らかに宣言したのだから、前進あるのみだろう。「潮目」は間違いなく向いているのだ。
岩谷産業の株価は、9月以降の急上昇で高値になっている。長期投資の視点で検討銘柄に加えて、購入時期を探るのもよいのではないかと考えている。(石井治彦)
2020年12月22日現在 保有株式 なし
【岩谷産業(8088)】
年初来高値 2020年12月29日 6480円
年初来安値 2020年 3月17日 3260円
直近 終値 2020年12月30日 6360円
プロフィール
石井治彦(いしい・はるひこ)
投資歴25年。「現物株式取引」と「長期投資」が基本姿勢。情報源はもっぱら会社四季報や日本経済新聞、経済誌など。また、株主総会やIR説明会には、できるだけ顔を出すようにしている。東京都出身。