議会の「ねじれ」つまずく可能性
バイデン氏が構想する政策をめぐって、シンクタンクのレポートが不確実性の要因として挙げるのが、議会のねじれの可能性だ。大統領選と同時に行われた連邦議会選で、バイデン氏の民主党は下院で過半数を維持したが、上院(定数100)では、共和党50、民主党48となり、ジョージア州の2議席が2021年1月5日の決戦投票に持ち越された。
伊藤忠総研は2020年11月27日付のレポートで、上院で共和党が多数を占める「ねじれ議会」になった場合のバイデン氏の公約実現可能性を考察。それによると、法人税の引き上げや、新たな法人課税、多くの環境政策で実現困難になるとみている。なかには、大統領権限で可能になるものもあるが、数は多くないという。
上院で共和党が多数派となった場合「バイデン氏が掲げる政策のうち、共和党が強硬に反対しているオバマケアの拡充や、トランプ政権による最大の成果と言っても過言ではない税制改革の巻き戻しに議会共和党が賛成するとは考え難い」というのが専門家らの一致した見方だ。
大和総研のレポートによると、ねじれ議会となり、ヘルスケアや税制改革が実現されないと想定すると、経済へのプラス効果は大幅に縮小する見込み。「『バイデン+ねじれ議会』シナリオ」では、日本では、2022年から25年の効果は、平均で年0.5%程度のプラスにとどまる。
議会にねじれがなく、バイデン氏の政策がすべて実現すれば、2022年には1.29%増、23年には2%増の効果が見込まれる。
日本への反映が2022年からになるのは「主に輸出の増加が企業収益や雇用、家計所得に波及し、さらに個人消費や設備投資などの国内需要を押し上げるまでにタイムラグが発生すると見込まれるため」だ。
上院で共和党が多数派となるのは、米国企業にとっては歓迎のよう。PwC(プライスウォーターハウスクーパース)は2020年12月10日付のレポートで、フォーチュン1000企業(米国の売上高上位1000社)を中心に、米国企業の経営者らを対象に実施した大統領選をめぐるパルスサーベイ(意識調査)の結果を公表。それによると、企業にとっては政策リスクである法人税引き上げなどの内容が、両党拮抗する上院の存在によって緩和の見込みが高まり、安心材料になっているという。