「一年の計は元旦にあり」社長はその言葉の意味を噛みしめよ(大関暁夫)

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   毎年、年始を控えたこの季節になると、経営者の方々との対話で来年(2021年)の社員向け年頭の挨拶に、どのようなことを盛り込もうかという話題が多く出てきます。

   単純に何を話そうかというお悩みだけでなく、このいわゆる年頭訓示と事業年度の初めの訓示内容と、どのような区分けするべきなのか、どのように整合性を持たせたらよいのか、あるいは話があちこちにならないようにどうしたいいのか、そのあたりのアドバイスを求める相談も多いです。

  • 新しい1年の始まりに、社員になにを伝えよう……
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ビジネスの初日に臨む社長の心構え

「一年の計は元旦にあり」というように、仕事における元旦である新年初日に、社長が何を社員に伝えるのか、これはこれからの一年社内がしっかりとした軸をもって仕事に集中してもらえるか否かのカギを握る重要な言葉であるといえます。

   ちなみに、「一年の計」の「計」とは計画の計であり、直訳的には「一年のはじめである元旦に、計画をしっかり立ててすすむべき」という意味です。転じて、「一年をしっかりと成果あるものにしていくためには、そのスタート時にしっかりと何をするのか決めなさい」、ということなのです。

   要するに、漫然と一年を始めるなかれ、ということ。特に我が国においてビジネスは、正月は古くから元旦から1月3日までの三が日を休日にあてることで、必要以上にひと区切りの意味合いが持たせられるわけで、どこの企業でもほぼ例外なく毎年仕事始めに社長が訓辞を垂れるという風習が定着しているわけなのです。

   一方で企業には、3月決算の4月1日のように新年度入りとなる月のスタートもまた仕事のうえでは「元旦」なのではないかということになり、どちらを真の「元旦」として考え、訓辞したらよいのか、あるいはどのような区分けをしたらよいのか、という冒頭にあげた相談の如き疑問にぶつかりがちなのです。

   回答申し上げれば、どちらも同じ「元旦」であるとしても、両者には明確な違いがあるということです。1月の仕事始めが暦という生活上認識される一つの区切りのスタートであるのに対して、新事業年度の仕事始めは業務上での区切りの始発点という意味での「元旦」になります。

   その意味から新事業年度「元旦」の社長訓辞は当たり前ではありますが、業務上これからの一年をどのように位置づけどのような経営方針、運営方針で、何をめざして会社を前に進めていくのか、について語る場になるわけです。

   これは、いわゆる新事業年度における業務運営方針をしっかり全社員に浸透、共有させるための訓示であると言えます。

「業務運営方針」と「社員の行動指針」

   ならば、新年の仕事始め年頭訓示は、業務運営方針との区分けという意味で、業務に偏らないものであるべきなのです。すなわち、「今年1年、社員にどのように行動してほしいか」という「今年のあるべき行動指針」を明らかにする場であると理解するのが肝要であろうということになるのです。

   新事業年度はじめの訓示が本年度の「業務運営方針」を徹底する目的であるのに対して、暦上で1年の仕事初めの年頭訓示は、本年の「当社社員の行動指針」を明確にするものとなるわけです。

   双方が相互矛盾を生んでいないということは大前提ですが、新年の訓示が業務に踏み込みすぎないということには特に注意を払いたいところです。業務に踏み込みすぎると、業務運営方針が変わってしまったのか、はたまた新たな方針が追加されたのかといった誤解や混乱を招く原因になりかねないからです。

   なお、12月決算で1月が新年度入りと重なる企業もあると思いますが、この場合は仕事始めに「行動指針」を訓辞し、新年度の業務運営方針は別途改めて提示しつつ、その折に双方の整合性を持たせるのがいいでしょう。

   では、具体的に年頭訓示をどのように考えるかですが、私が経営者とこの点に関して打ち合わせをするときには、「今の時代や社会情勢の中で当社が置かれた立場を踏まえて」自社の社員に、

「もっとこんな行動をしてほしい」
「これが足りないと思う」
「こんな姿勢を身に着けて欲しい」

   と思うことは何ですか、という質問を投げかけるようにしています。

   この「今の時代や社会情勢の中で当社が置かれた立場を踏まえて」ということは、かなり重要なことで、これがあることで「業務運営方針」との整合性が保たれ、学校の先生や僧侶の説教とは異なる事業会社のトップにふさわしい年頭訓示とすることができるわけなのです。

2021年の年頭訓示にふさわしいテーマは......

   大きくは社会情勢や景気動向、海外取引に絡む事業に携わる企業であるならば為替動向、その他個別の業界の動きや課題・問題点、さらには災害はじめ突発事態に対する備えに対する考えかたなど......。そのあたりを踏まえ、社員にどう心構え、かつ行動してほしいのか、それをわかりやすくより具体的な言葉にすることが大切です。

   「今の時代や社会情勢の中で当社が置かれた立場」が明確であればあるほど、行動指針は論理的になり説得力を増します。そして、「今年1年、社員にどのように行動してほしいか」ということが具体的であればあるほど、社員は行動に移しやすく年初の「行動指針」は実効性を持つことになるのです。

   2021年の年頭訓示に関して一般論として申し上げるなら、やはりコロナ禍という問題は業種問わずに避けては通れない話題であるのは間違いありません。まだまだ終息の見えないコロナ禍を、自社としてどのように受け止め、どのような対処が必要なのか。

   それを踏まえて社員一人ひとりに日々どのような行動を心掛けて欲しいのか、それをできる限り具体的な「行動指針」として指し示すことが年頭訓示としてふさわしいかもしれません。

   年頭訓示を考える際のヒントとしていただければ幸いです。

   みなさま、良いお年をお迎えください。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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