いっこうに収束する気配を見せない新型コロナウイルス。そんななか、「アンダーヘア脱毛」(VIO脱毛)を考えている男性が、若者層から高齢者に広がっている。
欧州のサッカー選手やラグビー選手らは、ロッカー室やシャワールームなどが兼用のため、衛生面に気遣ってアンダーヘアを処理していることで知られる。人気の日本人選手にも広がり、それが若者のあいだでも浸透。さらに高齢男性にも希望者が現れているという。
いったい、なぜ? 美容整形外科の大手「SBC湘南美容クリニック」マーケティング部に聞いた。
要介護になった時、周囲に迷惑をかけたくない
東京都内に住む50代後半の男性Uさんは、年上の妻との2人暮らし。子どもがいないこともあり、共働きで住宅ローンもすでに完済した。健康への不安も、今のところはあまりない。そんなUさんは最近、アンダーヘアの永久脱毛に通っている。
「この先、要介護になった場合、局部に毛があると不潔だし(年上の)カミさんや周囲に迷惑をかけると思って」
というのが、理由だ。
ちなみに、費用は全脱毛で総額30万~40万円程度で、複数回はクリニックに通わなければならないそうだ。
美容整形外科の大手「SBC湘南美容クリニック」マーケティング部によると、
「男性のVIO脱毛はここ10年ぐらいで確実に需要が増えてきています。脱毛に関しては女性のほうが意識は高いですが、その女性パートナーに背中を押されて、アンダーヘア脱毛に来られる男性の方もいます。直近5年をみても、緩やかですが右肩上がりで推移。なかでも要介護になる前の、50~60代の高齢男性は増加傾向にあります。
コロナ禍で、ご自身と向き合う時間が増えたり、リモート会議などで自分が映る姿を見たりして、いろいろと気になるところが出てきたり、美意識が上がったりしているように思います。それにより、VIO脱毛まで意識が働いたケースもあるかと。また、ヒゲの脱毛から始まり、その効果に満足して、次にVIOとステップを上げていくケースも多いですね」
と話す。
アンダーヘアに限らず、ヒゲや腋毛、胸毛といった脱毛を希望する男性が増えているといい、他にも、
・レーザー脱毛が市民権を得たこと
・施術価格が安くなり、手を出しやすくなったこと
・クリニック自体の数が増加していること
・テレビCMなどでタレントを起用し、イメージアップが図られていること
・インターネットの普及で、情報が手軽に入手できるようになったこと
が背景にあると、同クリニックは分析している。
コロナ禍にあって、衛生への意識が高まっていることもあるのかもしれない。
VIO脱毛「すでにやっている」30~40代で8%超
一方、インターネットメディア事業の株式会社Liberesが、20~49歳の男性240人を対象に実施した「男性のVIO(アンダーヘア)処理に関するアンケート調査」(2020年11月18日発表)によると、VIO脱毛を「やってみたい」と回答した男性は、20代が51.0%、30代が37.5%、40代が27.1%となっており、若者ほどVIO脱毛に対して前向きな姿勢を見せている。
その一方で、「すでにやっている」と回答した男性の割合は、30~40代がともに8.3%で、20代の4.2%に2倍近い差をつけている=下グラフ参照。
同社では、「20代よりも30~40代のほうが金銭的、時間的にも余裕があるため、VIO脱毛に挑戦しやすいことが理由として考えられる」としている。
また別の調査では、自分の老後を想定し、将来介護される側になった際に排泄後の拭き取りや清拭で介護士などの第三者に迷惑をかけないようにと、アンダーヘアを脱毛する「介護脱毛」が注目を集めている、という。
医療脱毛専門の「リゼクリニック」(東京都新宿区)の調査(親や家族の介護経験が多い40~50代の男女663人(男性333人/女性330人)を対象に、7月21日に実施)によると、将来に備えて「介護脱毛」をやりたいと思いますかとの問い(単一回答)に、「はい」と答えた男性は29.1%(40代33.7%、50代24.6%)と、約3割の男性がアンダーヘア脱毛を希望しているという。
ちなみに、女性は50.9%(40代54.6%、50代47.3%)だった。
近い将来、アンダーヘア脱毛は高齢者の身だしなみ、などといわれるようになるのかもしれない。