だから、アメリカの株を買いなさい!【投資の基本を知る その4】(小田切尚登)

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   株を買うというのは、すなわち日本の株を買うということだ。こう自動的に思ってしまう人は少なくない。理由はさまざまだ。

「海外の株は外貨建てなので為替リスクがある。なので、円建ての国内企業株式しかあり得ない」

という意見や

「日本人なのだから、日本企業のことを一番良くわかっている。外国のことはよくわからないので日本の株から選ぶしかない」

という声も聞かれる。

   しかし、こういう考えは間違いだ。

  • 米国にはグローバル企業がたくさんある(写真は米ニューヨーク証券取引所)
    米国にはグローバル企業がたくさんある(写真は米ニューヨーク証券取引所)
  • 米国にはグローバル企業がたくさんある(写真は米ニューヨーク証券取引所)

人口減少、高齢化...... 日本はいいことない

   まず、日本株というのは世界の中で結構マイナーな存在であるということを知らねばならない。日本経済は世界第3位の規模であるが、各国の株式時価総額を見ると日本の株式市場は世界の7%強ほどに過ぎない。

   もちろん、規模が小さくとも株価が上がっていけば良いのだが、それを見込みにくいのが問題だ。人口減少、高齢化など...... により、日本経済が停滞していっていることは良く知られるとおりである。

   株式というのは、企業が将来的に利益を生み出してもらうために投資するものであり、株価が上がる、配当金が支払われる、というふうにならないと意味がない。しかし残念ながら日本企業は総体的には成長が鈍り、そのため株価も低迷していることは誰の目にも明らかである。日本にも元気な企業はいろいろあるが、全体に今一つ元気がない企業集団の中から株価が大きく上がりそうな(=大きな利益を出しそうな)会社を見つけるのは容易ではない。

   では、日本はイマイチとして、アメリカの株式市場はそんなに良いのか? 優れているのには、いくつかの理由がある。まず市場の規模が大きいこと。世界の株式時価総額(株価と株数をかけたもの、企業の市場価値を示す)の半分近くは、アメリカの市場で上場する企業によってもたらされる。

   世界の時価総額トップ10の企業の7社、トップ100の企業の内61社が米国企業である。つまり、世界の株式市場の中心はアメリカ企業であるということだ。ハリウッド映画、メジャーリーグ・ベースボール、そしてITやバイオ......。アメリカが世界の先頭を走っている分野は多いが、こと金融に関してはアメリカの市場イコール世界であり、その他の市場はその付録と言っても良いような状況にある。

自由な想像力とダイナミズムが原動力

   米国には、アマゾンやマイクロソフト、アメックス、コカ・コーラなどのグローバル企業が数多く存在している。これらの企業は、ベースがたまたまアメリカであるものの、ビジネスはグローバルに展開している。これらの企業に投資するということは、アメリカ企業を通じて世界に投資するということに他ならない。

   日本にもトヨタやキヤノンなどをはじめとするグローバルなメーカーがあるが、サービス業はドメスティックな企業が多く、将来の展望も明るいとは言えない場合が多い。日本経済という狭い枠組みにとらわれた投資家は、そういう企業の株式を多く保有していくことになるだろう。

   そして、アメリカ株式に投資すべき最大の理由は、何といってもその成長力にある。日本にいると米国についての悪いニュースばかりが聴こえてくる傾向にある。

   トランプ大統領の愚行、人種や貧富などによる差別、犯罪やドラッグ...... などだ。確かに矛盾を多く抱えた国であるが、それが世界で最も自由で多様な国の持つ宿命でもある。勝ち組と負け組の格差は想像を絶するところがあるし、競争は必ずしもフェアではない。

   しかしそれらを自由な想像力とダイナミズムとで乗り越えていく、あるいは流動的な要素を逆手にとって成長していく。これがこの国の持ち味であり、世界最先端のビジネスを次々に生み出す原動力となっている。

   アップル、インテル、テスラ、ヤフー、コストコ......。世界のビジネスに新しい1ページを刻んだ会社ばかりだが、これらの会社の共通点をご存知だろうか?

   すべて移民が作った会社なのだ。近年はそういうイノベーティブな会社がアメリカばかりで誕生しており、日本やヨーロッパでは残念ながら生まれなくなっている。日本で移民問題というとネガティブな面ばかりを想像しがちだが、米国は移民の持つプラス面を上手に活用してきた。

   失敗を怖れずチャレンジすることを良しとする文化的素地と移民の持つバイタリティーとが相乗効果を生んだということだ。

   じつはフォーチュン500(米国内の総収入トップの500社)の中には外国生まれの人が作った会社が100社以上、移民の子どもが作った会社が100社以上ある。合計するとなんと半数近くが移民またはその子どもが作った会社なのである。

   これは何も最近の傾向ということではなく、通信会社AT&T(スコットランド出身のグラハム・ベルが創業)、製薬会社ファイザー(ドイツ出身のファイザーが創業)、食品大手クラフト(カナダ出身のクラフトが創業)といった伝統的な企業でも、移民が作った会社は少なくない。そもそも米国は移民が作り上げた国なのである。

アメリカにはディズニーもネトフリもマックもある

ベンチャー企業に投資する投資家も豊富にいる(写真は米ニューヨーク証券取引所)
ベンチャー企業に投資する投資家も豊富にいる(写真は米ニューヨーク証券取引所)

   米国の持つ強みは他にもいろいろある。ベンチャー企業に投資する投資家が豊富にいる、世界一の軍隊を有していてその技術やノウハウが様々なところに応用されている(たとえば、インターネット)、高等教育のレベルが高い、じつは農業や鉱工業も強い...... などだ。また、アメリカは世界最大の市場であり、大量の富裕層の存在を背景に消費意欲の旺盛な人々が数多くいる。先進国としては珍しく人口は今後も増えていくというのもプラスだ。

   つまり、米国は産業や金融のインフラが整備されている国であり、その中で自由でさまざまなチャンスに溢れているということだ。しかし、自分が米国に乗り込んでいって勝負しようとするのはハードルが高い。医療費や教育費は非常に高いし、エリートはスゴイ高収入を得られそうだが負け組になると生活は厳しい。犯罪も多そうだ。

   ただ、ご心配なく。その問題を解決する方法が、アメリカ企業の株式を買うということなのである。

   自分は日本で住んで、比較的安価な教育費や医療費あるいは優れた社会保障といった環境を享受する。給料は高くはなくとも米国企業のようにすぐにクビにされる怖れの少ない比較的安定している場所に身を置く。

   しかし、少子高齢化の日本の先行きには暗雲が忍び寄るので、投資先としては世界をけん引する米国の企業を選んでいく。そこには世界をリードするバイオやハイテクの企業もあれば、ディズニーやネットフリックスのようなエンタメ企業、マクドナルドもエクソンモービルもバークシャーハサウェイもある。

   我々がそれらの株式を買うのは、日本株を買うのに比べてほんの少しだけ複雑なところもあるが、それの対処方法については今後こちらで解説していきたい。

   日本に住んで日本企業で働く人が、カネもすべて日本国内に置いておくと、日本という国家と一蓮托生になってしまう。日本が沈没すると自分も一緒に沈没する運命となる。そこでリスク分散が必要となる。

   アメリカの上場企業の株式は世界の誰でも自由に売買できる。我々は日本にいながらに世界の最先端を走る会社に投資ができる状況にあるわけで、そのチャンスを見逃す手はない。アメリカ企業に投資することで日本にカネを預けておくよりも高いリターンが望めるのであれば願ったり叶ったりの話だ。まさに良いとこどりではないだろうか。(小田切尚登)

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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