「爆買い」一転、投げ売り懸念も
コロナ禍で顕在化してきたタワマンのステータスの陰りのもう一つの要因は、中国人投資家の撤退だ。ひと頃騒がれていた中国人投資家が都心部のタワマン上層部を買い占める「タワマン投資ブーム」は、すでに終焉を迎えている。
中国人が日本の不動産を買うのかというと、中国人が中国国内で不動産を資産として保有できないから。日本には外資による不動産取得の規制がないため、購入は容易だ。
中国人投資家のあいだで東京での不動産の「爆買い」が始ったのは2012年ごろ。2013年に東京でのオリンピック開催が決まると、物件の値上がりを見込んだタワマン投資ブームに火が付いた。
ところが新型コロナウイルスの感染拡大が発生し、オリンピックが延期になったこともあり、投資熱は冷却化。また、購入から5年以上経過した不動産は、売却の際に「長期譲渡所得」として税率が下がるが、爆買いブームで購入された物件がその時期を迎え、売却される動きが目立っているという。
中国の投資家たちが東京の不動産を売却する理由には、譲渡時期による税率の差に加えて、一時に比べて進んだ円高の事情もある。また、少子高齢化による賃貸ニーズの減少、2018年に法整備され民泊規制の厳格化も、売却ステージへの移動を促す材料になった。
中国人投資家の所有するタワマン物件は上層階が多い。本来であれば価値の高いそうした物件が、次の投資の見込み次第では、その原資の確保のために投げ売りされる可能性がある。そうなると、マンション全体の相場が下がりかねない。