新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。2020年12月24日、新規感染者が全国で3740人と過去最多を更新。東京都でも過去最多の888人をはじめ、神奈川県、千葉県、愛知県などでも過去最多を記録した。
こんななか、菅義偉首相は同日、コロナ特別措置法を改正し、事業者に休業要請などを守らせるために罰則規定を創設すると明らかにした。
ネット上では、
「自分が国民に訴えたルールも守らず、大人数で会食したガースー首相に飲食店に罰則を科すことができるのか!」
と怒りの声が巻き起こっている。
休業要請、補償金、罰則の3点セットの特措法改正
主要メディアの報道を総合すると、菅義偉首相は12月24日、東京都内で開かれた内外情勢調査会の全国懇談会で講演。新型コロナウイルスの感染再拡大を踏まえ、コロナ対策の特別措置法(新型インフルエンザ等対策特別措置法)改正案について、
「必要であればちゅうちょすることなく次期国会に提出し、成立させたい」
と表明。1年弱の新型コロナとの戦いでさまざまなことを学んだとしたうえで、新型コロナ対応で今やるべきこととして、飲食店などへの営業時間の短縮要請をあげた。
これは、政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長らが、
「一番効果がある」
と指摘したことを踏まえたものだ。
そして、営業時間短縮・休業の要請に応じない店舗への罰則の創設に前向きな考えを示した。首相は改正案について、
「時間短縮の規制、罰則、(時短に応じた店舗への)給付金、そうしたものをセットで(盛り込むことが)必要ではないかと私自身は思っている」
と話した。
今後、政府の新型コロナ対策分科会の中での議論を踏まえて具体的な改正案を詰めることになる。
菅首相が主張する「休業要請と補償金、罰則のセット」とは、こういうことだ。産経新聞(12月24日付)「特措法改正、罰則も検討 時短・休業、補償明記へ」が説明する。
「現在、特措法は24条で『(都道府県知事は)団体や個人に必要な協力の要請をすることができる』と定めている。知事が店舗に休業や時短を求める場合、これを根拠にしており、強制力はない。都道府県は要請に応じた店舗に『協力金』を支給し、政府は臨時交付金で支援しているが、改正案に『支援措置』を明記し、協力金を制度化することで、実効性を高めたい考えだ」
つまり、今まであいまいだった休業要請への補償を明記し、制度化するということだ。罰則規定はそのコインの表と裏である。補償する代わりに「強制力」をつけようというわけだ。
しかし、焦点の罰則の創設に対しては問題点が多い。朝日新聞(12月24日付)「コロナ特措法、罰則検討 政府、時短守らぬ店など対象」では、こんな課題を指摘する。
「罰則については政府・与党や専門家にもさまざまな意見がある。自民党の下村博文政調会長は『(協力金やペナルティーに対して)法的な根拠をもうけるのは理にかなっている』と述べる一方で、内閣法制局の関係者は『(憲法の私権制限などがからむため)罰則をもうけるには根拠が必要だ』と指摘する。メンバーの日本医師会常任理事の釜萢(かまやつ)敏氏は分科会後『冷静に議論するのはまだ難しいという意見もあった』と話した。新設するにしても、どの程度の(罰金の)金額水準とすれば効果があるかなどの検討が必要だ」