コロナ禍で賃貸ユーザーがいま求めている物件の「仕様」とは!?(中山登志朗)

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   コロナ禍で「巣ごもり需要」が拡大。オンでもオフでも快適なネット環境が必須になりました。連載4回目は、賃貸ユーザーが、いま重要視している物件の仕様についてお話しします。

   賃貸物件で生活することは、住宅を購入するよりも確実に住み替えが容易ですから、コロナ禍で住みたい街が郊外で増えたという調査結果(意向がほとんどで実際に住み替えた人は少数です)は記憶に新しいです。しかし、賃貸でどこに住んでも、現状では物理的にも心理的にも移動することに抵抗があり、やはり家の中で過ごすことが増えています。

   テレワークやオンライン授業の導入が進み、仕事も勉強もプライベートもすべて自宅でという状況になると、多くの人が気にすることは運動不足とインターネット環境です。運動不足の解消はご自身で意識して運動するよう心掛けるしかありませんが、インターネット環境は生活するうえでも仕事をするにも極めて重要なインフラとなっていますから、賃貸ユーザーも大変高い関心を持っているようです。

  • コロナ禍はインターネット環境が重要……
    コロナ禍はインターネット環境が重要……
  • コロナ禍はインターネット環境が重要……

インターネット環境はあって当然、回線スピードを重視

   自宅で過ごすことが増え、いわゆる「巣ごもり需要」が拡大しました。テレワークやオンライン授業だけでなく、映画や動画鑑賞、SNSなどのコミュニケーションやゲーム、音楽などのコンテンツ利用、さらには食事のデリバリーにも生活用品の買い物にも前提としてのインターネットが、ほぼ必需品と言えるような状況です。

   テレビを観ない日はあってもネットを利用しない日はないという若年層も多いのではないでしょうか。

   こうなると、これら生活全般を支えるインターネット環境=インターネットの品質はとても重要です。住宅を購入した方はお好きなインターネット環境を選択して導入し、快適なネット活用をされていることと思いますが、賃貸住宅でも入居者獲得のため、無料で利用可能なインターネット環境があることがほぼ当たり前になっています。

   ところが、このようなサービスは建物に引き込んだインターネット回線を各戸でシェアするケースがほとんどで、複数の入居者が同じ時間帯にインターネットを利用すると、当然速度は遅くなってしまいます。

   テレワークやオンライン授業で動画をダウンロードしたり、ネットを介して会議を開催したりする機会が飛躍的に増え、それに応じて通信量は増えるばかりです。

   そのため、入居者の中には賃貸物件に無料のインターネット設備があっても、それとは別に回線速度の速いインターネット回線を契約してWi-Fiルーターを設置し利用するケースが増加しています。 内見する際にスマホのアプリで通信速度を測る入居希望者もいるくらいですから、インターネット環境は、あれば良いサービスであった時代がアッという間に終わり、あるのが前提でかつ回線スピードが重要視される時代に変わりました。

   いずれはそうなっていたとは思いますが、コロナの影響で一気に加速したようです。

コロナ禍を逆手にとって快適な家庭内生活環境を提案

   このように、インターネットの需要がこれまでになく高まって生活インフラとして欠くことのできないものになっていると考えれば、大家さんや賃貸仲介・管理を手掛ける会社は今後手掛けるべきサービスとして、高品質で大容量の回線を導入することや、まとめて契約することでより安価に回線を提供すること、万一何らかのトラブルで繋がらなくなった際に素早くリカバリーできる体制を整えること、などが必要になってくるでしょう。

   一例を挙げると、次世代インターネット接続方式と言われるIPv6(インターネット・プロトコルver.6:現状はIPv4)にも対応できる環境を、いち早く導入している賃貸物件もすでに出てきています。システム・エンジニアなど自宅でも高セキュリティ&高品質なインターネット環境で仕事をする人から好評とのことです。

   ちなみに、IPv6に対応すると潤沢なアドレス空間が持てるようになります。さらにネット接続可能な家電類も含め、さまざまな機器がIPv6アドレスを使えるようになると、窓の施錠ほか防犯対策、照明のオン・オフや番組録画の予約、帰宅前の入浴準備や調理開始、室内清掃やペットへの給餌など、日常生活の多くを効率化できる快適な住環境を提案することもできるようになります(ただし電力の契約アンペア数にも注意が必要です)。

   コロナ禍での巣ごもり需要を逆手にとって、インターネット環境を最新のものにヴァージョンアップすることで、より快適で安心・安全な生活環境を提供できる環境が整いつつあり、また実際にこのような高機能な賃貸物件も一部で世に出始めています。

   コロナ禍で生活環境や日常のルーティーンが大きく変わり、移動や旅行、会食の自粛など「自由」が奪われるような何かとストレスが溜まりやすい状況に我々は身を置いています。

   この急激な環境変化に対応してインターネット環境を充実させることで、社会インフラ自体も構成を含めて大きく変わろうとしています。是非インターネット・リテラシーを磨いて、来るべき"コロナ後"に向けてもご準備いただきたいと思います。(中山登志朗)

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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