感情をコントロールする意味
EQ(Emotional Intelligence Quotient)という理論があります。私たちが望ましい社会生活をおくるには、IQ(頭のよさ)ではなく、EQ(心の知能指数)が重要であることや、成果に影響を及ぼしていることを理論化したものです。日本では、約20年前にEQJAPAN,Incが理論を確立し、EQ理論提唱者のイェール大学のピーター・サロベイ博士(現イェール大学学長)、ニューハンプシャー大学教授のジョン・メイヤー博士と共同研究を行っていました。
当時、私はEQJAPAN,Incでソリューション、戦略・研究開発を統括する責任者の職位にありました。EQ理論のひとつに「6セカンズ」と呼ばれるものがあります。カッとすると、感情(情動)がハイジャックされて、暴言や暴力につながったり、余計なひと言を言ってしまうことがあります。そうならないために、カッとなったら6秒間沈黙して、感情をうまくコントロールするというものです。
堀田教授が紹介する「10セカンズ」は、EQ理論の「6セカンズ」に通じる要素があると考えられます。私たちが望ましい社会生活を送るには、感情を調整する包括的なコミュニケーション力が必要です。
近年、感情のコントロールを苦手とする人が増えています。とくに、公的な場で感情をあらわにすることは品位にかかわるので避けなければいけません。
本書には、スタンフォード大学やハーバード大学など、最先端の心理学、脳科学、行動経済学などの諸分野で実験によって効果が証明された、具体的アクションが網羅されています。この機会に感情をコントロールする意味について考えてみてはいかがでしょうか。メンタルがむしばまれがちな今の時代、ストレス対処は必須のスキルといえます。(尾藤克之)