酒類メーカー大手の宝酒造(京都市)は、発泡性の味わいで日本酒の新市場を開拓してきたスパークリング清酒の「松竹梅白壁蔵『澪』」が2021年に、発売10周年のアニバーサリーイヤーを迎えるにあたり、ブランド力の強化を図る。
新たにフィギュアスケート元世界女王でプロフィギュアスケーターの浅田真央さんをアンバサダーに起用するなど、「澪」ブランドをさまざまな企画で盛り上げる。2020年12月15日には、東京都内で「10周年ブランド戦略発表会」を開催。会場には浅田さんが駆け付け、華やかさを添えた。
累計7000万本を突破! 開発秘話明かす
発表会では、宝酒造の商品第三部の清水隆広部長が「澪」について、「2011年に発売し、2021年6月で10周年を迎える。日本酒になじみの薄い若年層を含め、幅広い方々に上質の飲用シーンを提供するお酒として愛され、現在まで7000万本以上を販売している」と説明。累計販売数が7000万本を突破したのは、10周年をちょうど1年後に控えた2020年6月で、消費者に定着していることが示された。
日本酒は成人人口の減少のほか酒類の多様化もあって市場の縮小が続いている。そのことに歯止めをかけるための「日本酒市場の活性化」は「宝酒造の使命でもある」と清水部長。その取り組みの一つとして「澪」は開発された。
宝酒造の商品第二部専門課長で「澪」ブランド担当を務める田和綾子さんは
「日本酒を飲まない若年層に耳を傾け、低アルコール、甘口を好む傾向を把握。そしてアルコール度数5%と従来の日本酒の3分の1に抑え、ほのかな甘みとほどよい酸味と若者にも飲みやすい清酒を誕生させた」
と話し、米と米麹だけを原材料に伝統的日本酒の味わいをキープしながら、フルーティーさを感じられるように製法を工夫。そこにスパークリングの刺激が加わりコンテンポラリーなテイストが醸し出されたという。
開発にかけた期間は約6年間。販売でも「熟成」を期して、発売当初は「料飲店」「百貨店」「通販」など販売ルートを限定するなどマーケティングにも工夫を加えた。発売2年後に、満を持してコンビニエンスストアなどを合わせた全ルートに販路を拡大。すると「予想以上の反響」(田和課長)があり、瞬く間にヒット商品になったという。
若年層女性に照準 YouTube「MIO×MAOチャンネル」スタート
年を追うごとに販売を増やした「澪」。発表会で引用された2019年の統計では、スパークリング清酒市場でシェア82%を占める。
田和課長は支持された理由について、「新しい日本酒としての価値」が認められたこと強調。そのことを示すものとして、輸出量の増加を挙げる。「澪」は欧米、アジアなど計25か国でも愛飲されており、その量は2012~19年に5倍に跳ね上がった。
発売10周年の2011年に、宝酒造ではこれまでに定着した「新しい日本酒」のブランドイメージを発展させ、若年層の女性を主なターゲットに「私にぴったりの日本酒」としての存在感が際立つようキャンペーンを進める計画。
2020年のコロナでは、アルコール飲料をめぐっては「家飲み」が増え、「澪」はそのなかで「『ごほうび』シーンなど、ちょっと贅沢な時間のお伴」として消費が増えているという。
このことを足掛かりに「『澪』ならではの少し贅沢な気分と上質な飲用シーンを提供」する戦略を展開。「私にぴったりの...」と感じられるように運びたい意向だ。
そのための強力なサポート役を務めるのが浅田真央さんだ。
「日本が誇る、優しさと強さを持つ女性。凛とした美しさがあり、挑戦し、歴史を切り拓いてきた浅田真央さんとともに、澪も新たな日本酒の世界を切り拓いていきたい」
と田和課長は、浅田さん起用の理由を説明。浅田さんは「お酒の中では日本酒が一番好き」と言い、ぴったりのキャスティングになった。
浅田さんは「澪」をイメージしたという「エアリー」な白いドレス姿で登場。アンバサダー就任をお披露目。また発表会に合わせて、12月15日に浅田さんが「澪」の魅力を紹介するYouTubeチャンネル「MIO×MAOチャンネル」を開設したことを発表した。
今後、関連商品の紹介や新しい飲み方やレシピ、料理との相性などについて、浅田さんが「澪」の魅力について発信していく。新たな試みとして宝酒造は、「澪」の製品ラベルに「MIO×MAOチャンネル」を開くQRコードを記載。「飲みながらユーチューブを楽しめるよう」に仕掛けを配している。