新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからないなか、コロナに関連した解雇人数が7万6000人を超えた。厚生労働省が2020年12月15日に発表した。
しかし、この数字は氷山の一角だ。年末年始、解雇された人たちはどう生活すればよいのだろうか。ネットでは、
「うちの会社に来て」
「のどから手が出るほど人手をほしがっている業界があるよ。頑張って」
とエールの声があがっている。
数字は氷山の一角、正社員と非正規が半数ずつ
厚生労働省のホームページによると、コロナ関連の解雇や雇い止めの人数(見込みを含む)が12月11日時点で、今年2月以降の累積で7万6543人に達した。このうちアルバイトなどの非正規労働者が約半数の48.3%に当たる3万6968人を占めた。
業種別の累積解雇人数では、製造業が2万2135人で最多。飲食業が1万3974人、小売業が1万1923人、サービス業が1万755人、建設業が7691人と続いた。
都道府県別では東京都が1万8476人で最も多かった。次いで大阪府が6581人、愛知県が4315人、神奈川県が3354人、北海道が2979人となった。ほぼ新型コロナウイルスの感染者数が多い順番どうりの結果となった。
これらは、厚生労働省が今年2月から全国の労働局やハローワークを通じて日々の最新状況を集計した数字の累計だ。6月に累計で2万人を超えて以降は9月までは1か月にほぼ1万人ペースで増加してきた。10月(7506人)、11月(5193人)と増加のペースはやや鈍化しているとはいえ、雇用情勢の厳しさが改めて浮き彫りになった。
ただし、これは実際に解雇された膨大な人々の氷山の一角にすぎない。企業には一定規模のリストラをする際に、ハローワークなどに従業員整理計画の届け出が義務付けられており、その届け出を通じて把握できた数字だ。小規模のリストラでは届け出義務がないため、実際の人数はかなり多くなるとみられる。
「建設業が待っています。女性も大歓迎ですよ」
ネット上ではリストラ体験者らの嘆きの声とともに、「うちに来て働いてください」などのエールの声があふれている。
労働・生活相談に関わるNPO法人POSSE代表の今野晴貴氏は投稿で、こうアドバイスしている。
「この調査は、経営者がコロナに関する解雇と認めた際にのみ人数がカウントされる。つまり、労働者が誰にも相談せず、諦めてしまったケースは闇に葬られる。加えて、実際はコロナ解雇であっても経営者が認めないケースが非常に多い。というのも、コロナ理由の解雇の場合、雇用調整助成金を申請すれば休業手当のうち中小企業の場合は最大100%、大企業の場合は最大75%が助成される。経営者がこうした支払いをしたくないため、解雇理由を正直に認めないケースが多いのだ。だが、広がるコロナ解雇に対処法はある。コロナ対策の雇用調整助成金の特例措置が来年2月末まで延期された。この制度を会社に使わせるため、個人で加盟できる労働組合などに相談してほしい」
こんな嘆息の声が多く寄せられている。
「この中には、断腸の思いで店を畳んだ自営業者も、仕事がすべてストップしてニート状態になっているフリーランスの専門職も、シフトが激減して生活費を稼げなくなったフリーターも、待機状態の時間給労働者も含まれていないのですよね」
しかし、そんな人々に「うちの業界に来て!」とエールの声が寄せられている。特に多いのが建設業からの誘いだ。
「建設業界へ来てください。住み込みで働ける所もあります。たいてい、飯付き。しんどい仕事ですが、10日ほどで慣れます。体が環境に適応していくのです。危険な仕事もありますが、『危険を予測し、それを避ける仕組み』もできています。社会保険も、福利厚生も充実しつつあります。女性も、少ないですが、いますよ。現場は広いので3密の心配はあまりないです。作業着・安全靴・マスクなどは、たぶん会社のほうで用意してくれますよ。まずは電話して、門をたたいてください」
「私は女です。もともと接客業でしたが、人手が足りない際、主人の会社で真冬に足場に登り、ペンキを塗っていた時期があります。初めは正直2階部分の足場ですら高さに抵抗がありましたが、すぐに慣れました。寒さも暑さよりは対策のしようがあります。左官職人をされている女性もいました。女性=現場仕事は選択肢の一つに浮かびづらいので、参考になればと思い、書かせて頂きました」
建設業を営んでいる人からは、こんなエールが。
「建設業を経営しています。10年前に比べればかなり優しくなっている業種です。怒りちらす人は逆に『辞めてください』です。人手不足により地方では災害復旧に追われ2年先まで仕事がある状況になっています。職がなくなった方は前向きに検討してほしいです。給与面も人手の確保のため上がっていますよ」
「建設業の元請の監督をしているが、良くも悪くも他業界の人が入りやすいところだ。現場をみていると、熟練工から新人まで色んな人がいます。熟練工は溶接や玉掛など資格が必要な作業をする。一方、新人は道具運びだったり、熟練工の補助で工具をとってきたり、資材置き場の整理整頓など主に資格不要な雑用ばかりして、熟練工から怒鳴られたりしている。最初は体力的、精神的にもきついと思うが、慣れと本人の努力でどうにでもなる業界だと思う。中年以上の人でも他業界から入ってきたと、見たらすぐわかる。鉄工、溶接工、配管工、保温工、築炉工などいろんな職人を見るが、だいたい素人からでも働けると思う。ただ、電気工事系だけは他業界からの転職はやめたほうがいい。電気で命を落とすこともあるので」
経験者からは、こんな声があった。
「ずっとデスクワークでしたが、30代でメンタルをやられて思い切って建設業に飛び込みました。怒号が飛び交い、命の危険もあり...。でも慣れるもので、精神はタフになりましたよ。おかげで鬱(うつ)が治りました」
「介護なら即採用。隠れた『福祉の心』に気づくかも」
別の業種からも誘いの声が相次いでいる。
「製造工場ですが、相変わらず募集出しても来ないですよ。パッと見の賃金は安いですが長く働けるから定着率はいい。慣れるまでの数年が少し大変なだけ。土日休み。危険作業なし。重い運搬なし。エアコン完備。清潔な職場。残業は月に0~20時間。超繁忙期でも40時間で、もちろん残業手当全額支給。いま離職している人って仕事選び過ぎなのでは?」
「鉄鋼会社の関連子会社ですが、慢性的な人不足ゆえベトナム人の研修という名の派遣を受けています。昔の大学卒でない人が普通にやっていた仕事の成り手がいなくなって困っている業界は建設以外も結構ありますよ」
「私は、食品製造会社で働いています。前職のプライドを捨てて勤務しています。時給はかなり下がりましたが、切り詰めるところを切り詰めて、今はのびのびと仕事をしています。以前よりストレスもなく楽しい毎日です」
また、慢性的に人手不足の介護業界からの誘いも多かった。
「勤め先がコロナで傾き、仕事が激減になったので、夜間に介護の副業を始めました。結果、以前以上の収入が確保できました。初めは体力的、精神的にしんどかったけれど、ひと月も頑張れば慣れるものですね。よく失業イコール自殺みたいな安直なニュースが流れますが、気持ちひとつで人間何とかなるものです」
「介護業界はイメージ最悪だけど、始めてみたら、意外と自分の知らなかった『福祉の心』が目覚めた、という人もいたりします。合わない人は無理かもしれませんが、とりあえずダメもとで、近くの介護施設に電話してみるといいと思います。多くの施設が即日採用状態です」
しかし、「仕事ならなんでもいいというわけにはいかない」という声があるのは確かだ。
「いくら離職中でも仕事は選びたいもの。死ぬか生きるかとか、路上生活よりいいとか言われても極端すぎる。何十年もキャリアを積んできた人が、いきなり建築や介護現場にはなかなかいけない。適材適所、向き不向きがある」
「30代前半。コロナで失業。長年正社員経験あり。雇用形態、仕事内容、勤務地等選ばずに60社くらい必死に探して応募しているが、連絡があったのは3社のみ。ほとんどの会社が連絡すらしてこない。応募しても連絡してこないのに、再掲載されていた例もある。面接した2社は『応募締め切りました』。なら、面接前に連絡を入れるべきだ。残り1社が合否連絡待ち。これが現状です」
最後にこんな前向きの人々の声を紹介したい。
「自分は自営の運送業をしていますが、なんとか廃業せずに年を越せそうです。周囲からはこんな時期に営業をしても仕事なんかあるわけがない。やるだけ無駄といわれたが、限られた予算の中で1年間営業活動をしてきました。たった2社だが、毎月使って下さる会社が見つかった。0(ゼロ)でなかったことがうれしかった。コロナだから仕方ないと諦めて他の仕事につくのか。何クソと自分を奮い立たせて頑張るのか。それによって未来が変わってくる。今年はたくさんの会社の担当者と話ができ、来年以降の望みにつながった気がします。来年は48歳になり、結婚も周囲からは無理と言われていますが、これも諦めていません」
(福田和郎)