新型コロナウイルスに明け暮れた2020年。感染が再拡大する中で、企業の希望退職の募集が増えている。12月に入ってからは、ホンダや曙ブレーキ、藤田観光などが募集を発表。三菱自動車は希望退職の募集人数を上回る応募があったことを明らかにした。
東京商工リサーチの調べによると、上場企業の早期・希望退職者募集が12月7日までに90社に達し、リーマン・ショック直後の2009年(191社)に次ぐ高水準に押し上がっている。12月9日の発表。
コロナ直撃の外食ではさらに増える可能性も
調査によると、2020年の早期・希望退職者の募集人数は1万7697人で、2010年以降で最も多かった。
2012年通年(1万7705人)の募集人数とほぼ同じ水準。リーマン・ショックの影響が及んだ09年の2万2950人に次ぐ水準となることが確実になった。
募集企業の業績をみると、直近の本決算での赤字が50社(構成比55.5%)と半数以上を占め、東京商工リサーチは「新型コロナウイルスの打撃で業績悪化に陥った企業が従来型の『赤字リストラ』を実施している状況を浮き彫りにした」と指摘している。
業種別でみると、アパレル・繊維製品が17社(構成比18.8%)で最多。次いで、米中貿易摩擦とコロナ禍の影響が大きい自動車関連が11社(同12.2%)、市況の悪化や拠点の集約を背景とした電気機器10社(同11.1%)、居酒屋チェーンの運営会社を中心に感染防止で外出自粛の影響が長引く外食が7社(同7.7%)と続いた。
東京商工リサーチは外食7社について、「チェーン業態を中心に、店舗施策の見直しを行う企業が年度末にかけて増えており、感染拡大の収束や影響によっては年をまたぎ、さらなる人員削減の増加の可能性も残している」とみている。
ファミマ800人募集に1025人応募
募集人数の規模をみると、最多が日立金属の1030人。同社は日立製作所の上場子会社で、日立製作所が現在、同社の売却に向けて入札手続きを進めている。次いでレオパレス21の1000人、コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス900人、ファミリーマート800人などが続く。ファミリーマートでは1025人の応募があったという。
東芝は半導体子会社で2年連続の実施となり770人を募集。複数の子会社で募集をかけるシチズン時計は計750人。セガサミーホールディングスは12月25日までを期限に650人を募集しており、三菱自動車は11月中旬から下旬にかけて550人を募集したところ、12月7日までに654人の応募があったと発表した。
募集人数が300人以下は67社(構成比74.4%)で7割超を占めた。このうち、100人以下の募集が44社(同48.8%)と約半数を占め、中堅の上場企業の実施に加え、部門の統合や縮小を行う大企業で小規模の募集が目立った。
2021年に募集を開始する上場企業はすでに9社が判明。募集人数は判明分で1950人にのぼる。業種では、自動車関連が3社で最多。次いでサービス業2社。サービス業は、藤田観光のほか近畿日本ツーリスト各社の親会社であるKNT-CTホールディングスで、いずれも観光関連だ。
2021年の見通しについて東京商工リサーチは「コロナが直撃したB to C業種に加え、製造業でも構造改革を大義名分とした人員削減が本格化する可能性がある」としている。
なお調査は、早期・希望退職者募集の実施を情報開示し、具体的な内容を確認できた上場企業を抽出して実施。「早期・希望退職」に加え、退職時に加算金を盛り込む退職勧奨や選択定年も対象とした。