新型コロナウイルスの影響で「100年に1度のパンデミック」といわれた2020年。今年最も販売に苦戦した商品は、「口紅」だった。市場調査のインテージが12月14日に発表した。販売金額ベースで前年同期と比べて56%減った。
メディアでも数多く取り上げられたが、女性がマスクをする場合、口紅をつけない、つけてもマスクについてしまうといった理由や、4月の緊急事態宣言や在宅勤務の奨励で外出する機会が減り、そもそも化粧をすることが減ったことで、売り上げが落ち込んだと推察できる。
マスクをしているから... 化粧品が軒並み減少
口紅をはじめ、化粧品の売り上げは軒並みダウンした。4位の「ほほべに」(前年比34%)や5位「ファンデーション」(32%)、6位「化粧下地」(28%減)、7位の「おしろい」(21%減)と、下落率が大きい10品目のうち、半分を占めた=下表参照。
2位の鎮暈剤(ちんうんざい、46%減)は聞きなれない言葉だが、簡単にいえば、めまいの症状を改善する薬。乗り物などの酔い止め薬などがそれだ。本来なら多くの人が旅行するゴールデンウィークと緊急事態宣言が重なったため、4月下旬~5月上旬は前年同期と比べて8割減にものぼる週もあった。
3位の「強心剤」(37%減)、7位の「鎮咳去痰剤」(ちんがんきょたんざい=咳を鎮めて痰を出やすくする薬、21%減)、9位の「総合感冒薬」(21%減)、10位のビタミンB1剤(19%減)などの市販薬は、海外からの旅行者がおみやげに買って行くなどのインバウンド熱が減っただけに、影響を受けたといえる。
希望の光となった「鬼滅の刃」
2019年はタピオカ人気にけん引され、デザートドリンクが1位となった「売れたものランキング」だが、今年は新型コロナウイルスの影響で、大きく様変わりした。
当然ながら、コロナ対策グッズが上位を独占。1位となったのはマスク。販売金額は前年比425%だった。春先には品不足が大きな社会問題になり、テレビなどでも連日放送されていたが、例年もインフルエンザ予防や花粉症対策として一定の需要があり、ここ10年ほど市場拡大が続いていたことなどで、4倍超の水準だった=上表参照(12月7日発表)。
2位は殺菌消毒剤で302%。ただ、傷口の消毒などを除いた手指消毒剤に限定すると、さらに数字は跳ね上がり驚異の9倍超に。個人で持ち歩いたり、公共施設やレストラン、スーパーなどの入り口に置いてあったりするなど、新しい生活様式には欠かせないアイテムとなった。
そんななか、異彩を放ったのが6位の玩具メーカー菓子で、53%増と大きく伸長した。「玩具メーカーのおもちゃ付き菓子」だが、今年は国民的大ヒット作品となった「鬼滅の刃」関連の商品が原動力となり、大幅に販売金額を増やしている。
このほか8位の粉末プロテインは特に女性の購入が増加した。外出や運動の機会が減り、美容と健康を気にした層からの支持が多かったようだ。
また9位の冷凍水産、10位のプレミックス(ホットケーキなどの材料)は長期保存がききやすく、まさに「巣ごもり消費」の増加を反映する顕著なランキングとなっている。
なお、調査は2020年1~10月に、全国約4000店舗から収集している小売店販売データ、SRI(R)=全国小売店パネル調査をもとに前年同期と比較した。