ジョブズやゲイツも恐れた「スマホ脳」 どうしたら避けられるのか!?

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   本書「スマホ脳」は、現代でほとんどといってもいいほど多くの人が手にしているスマートフォンが、脳科学的見地から、恐ろしいほどの影響を脳に与えることがあることに警鐘を鳴らした一冊。著者の母国であるスウェーデンで2018年に刊行されて瞬く間にベストセラーとなり、その後も長く好調な売れ行きが続いた。

   世界13か国に版権が譲渡され、日本版の発売は、スマホがライフラインとして存在感を増したコロナ禍の最中となった。著者は「コロナに寄せて」とする「新しいまえがき」で「そんな今だからこそ読むべき」と述べている。

「スマホ脳」(アンデシュ・ハンセン著、久山葉子訳)新潮社
  • あなたの脳は大丈夫か!?
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そもそも人間はデジタル社会に不適応

   著者のアンデシュ・ハンセンは、北欧スウェーデンの精神科医。ノーベル賞(生理学医学賞)の選考を行うカロリンスカ医科大学(ストックホルム)を卒業。さらにストックホルム商科大学で経営学修士(MBA)を取得するなど異色の経歴を持つ。

   王家と縁が深いソフィアヘメット病院(ストックホルム)に勤務する傍ら、執筆活動やメディア活動に熱心で、前作の「一流の頭脳」は人口1000万人のスウェーデンで60万部売れ、その後に世界的ベストセラーとなった。

   著者が、スマホは脳にとって恐ろしいほどの影響を与えると述べるのは、人間の脳がデジタル社会にきちんと適応するよう進化していない、ということが理由だ。

   スマホや電気や自動車はわたしたちにとってごく自然な存在であり、それらがない社会は考えられない。だが、その現代社会は人間の歴史からみれば、ほんの一瞬すぎず、人間が地球上に現れてからこれまでの時間のうち99.9%は、狩猟と採集でくらしてきた時間が占めている。

   つまり、私たちの脳は今でもなお、当時の生活様式に最適化された状態で、この1万年のあいだ変化していないのだ。

   脳が司る睡眠や運動の必要性、人間相互間の欲求はながくそのままであるにもかかわらず、人間はその事実から目を背け、睡眠時間は減り、精神状態が悪くなっている。

   スマホは事態の悪化を加速した。とくに若者は片時もスマホを手放さず、ベッドに入ってからも操作を続ける。先進諸国のほとんどで睡眠障害の治療を受ける若者がこの10年で爆発的増え、その割合は9人に1人に及ぶ。著者の母国スウェーデンでは不眠で受診する若者の数は、2000年ごろと比べて8倍になった。

大企業は脳科学者を雇用してアプリを開発している

   本書では、最新の脳科学の膨大な実験結果をもとに、スマホをめぐる数々の「恐るべき事実」が指摘される。たとえば、現代人がスマホを手にする回数。その頻度は10分に1回で、触る回数は1日平均2600回に及ぶ。

   著者は「スマホは私たちの最新のドラッグ」というが、その証拠にスマホを強制的に手放す実験をすると、手放した被験者の体内では、ほんの10分でストレスホルモンであるコルチゾールが上昇する。それはつまり、脳が「闘争か逃走か」のモードに入ることなのだという。

   こうしたことが顕著に現れるのは、スマホを頻繁に使っている人で、そうでない人の場合はコルチゾールは、それほど上昇しない。著者は「脳がどのように進化してきたかを考えると、それも特におかしなことではない」と述べる。

   デジタル社会に適応していない人間の脳は、頻繁にスマホを利用することで、知らず知らずのうちに依存を強めてしまう。というのも、本書の指摘によれば、大企業は脳科学者を雇用してアプリを開発している。最先端の脳科学研究を動員し、アプリが脳に快楽物質を分泌する仕組みを利用して依存性を高進させている。

   フェイスブックの「いいね」機能を開発した米国人、ジャスティン・ローゼンスタイン氏はインタビューで、自分のフェイスブックの利用時間を制限し、スナップチャットをすっぱりやめたことを明かした。

   自ら創造した「立てた親指」が「度を過ぎて魅力的」だと後悔したという。「製品を開発するときに最善を尽くすのは当然のこと。それが思ってもみないような悪影響を与える―。それに気づいたのは後になってからだ」と述べている。

スマホの依存性はヘロインに匹敵

   スマホについて、ローゼンスタイン氏は、依存性ではヘロインに匹敵するという理由で使用にブレーキをかけるため、本来は保護者が子どものスマホ使用を制限するアプリをインストールしたことも紹介されている。

   また、本書ではIT企業のトップが子どもにスマホを与えないなど、デジタル製品の扱いに慎重なことを紹介。アップルの創業者、スティーブ・ジョブズ氏は、10代の子どもにiPadを使える時間を厳しく制限していた。マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ氏は、14歳になるまで子どもにはスマホを持たせなかったと話している。

   著者は、科学的見地から知ると身をすくめてしまうような現実を警告し、スマホ依存しやすいタイプをプロファイル。また、どうすれば依存を避けられるのか、子どもにはどう対応すべきかなどについての方法も指南している。

「スマホ脳」
アンデシュ・ハンセン著、久山葉子訳
新潮社
980円(税別)

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