今回選んだ銘柄は、東証マザーズ上場の「NexTone」(7094)だ。
NexToneは、音楽コンテンツの著作権管理を展開している。業界の「巨人」JASRAC(一般社団法人 日本音楽著作権協会)に対抗するため、音楽著作権管理業界の当時の第2位と第3位の企業が2016年に合併して発足した企業だ。2020年3月の上場で、知名度はまだ低いが、業績の成長率が注目に値すると考えた。
2021年3月期は29%の増収、25%の営業増益を予想
ここからはNexToneの事業内容、業績推移、競合であるJASRACとの比較、NexToneの財務安全性について、順に考察していきたい。
まずは、NexToneの事業内容について確認したい。NexToneは主に著作権等管理事業とDD(デジタルコンテンツディストリビューション)事業、キャスティング事業の3つを行っている。その中でも著作権等管理事業は売上高全体の9割弱を占めるメインの事業だ。
これは、音楽コンテンツの著作権者から委託を受けた著作物を管理し、利用者に対する著作物使用料の徴収や、著作権者への使用料の分配をする中で受けとる手数料が収益源になる事業である。
また、DD事業とは、Apple MusicやYouTubeなどの国内外の音楽配信プラットフォームに向けた音楽・映像コンテンツの供給を行う事業である。そして、キャスティング事業では、アーティストの稼働やライブへのユーザー招待などによる、コンテンツ利用促進のためのコーディネートや、NexToneの管理楽曲を使用するライブビューイングのサポートなどを行っている。
次にNexToneの業績の推移を見る。NexToneのメインの事業である著作権等管理事業では、管理楽曲数と楽曲当たりの徴収額が重要な指標となる。管理楽曲数は右肩上がりに伸びており、2021年3月期第2四半期の時点で前年比2ケタを超えて拡大している。
また、楽曲当たりの徴収額も上昇中で、2021年3月期第2四半期時点では16年3月期の2倍以上となっている。
このように著作権等管理事業が好調なため、全体の売上高は16年の発足以降、年率40%弱の成長を続けていて、今期の経常利益は2ケタ台に乗せる勢いとなっている。
2021年3月期決算の見通しについては、コロナ禍の影響は期を通じて継続する想定ではあるが、巣ごもり需要をけん引役に増収増益になるとしている。業績面では、管理楽曲数の前年比28%増を前提に、29%の増収、25%の営業増益を想定する。
強み生かして約5%のシェア拡大へ
音楽コンテンツの著作権管理事業で、NexToneの競合はJASRACのみである。市場のシェアを見るときの指標となる著作権使用料徴収額で比較すると、2019年度の実績ではNexToneが55億円、JASRACが1177億円である。つまり、現時点でのNexToneのシェアは5%ほどしかない。
しかし、NexToneはシェアの拡大につながる強みをもっている。一つは、委託者(著作権者)との契約形態が委託契約となっている点だ。委託契約では著作権がNexToneに移転しないため、権利者に裁量が残る。一方で、JASRACは信託契約の形をとっているため、著作権はJASRACに移転し、権利者の意思を反映しがたい。この点が両社の最も大きな違いであり、十分に権利者がNexToneを選ぶ理由になると考える。
加えて、NexToneはDD事業とキャスティング事業を通じて、管理楽曲の利用と浸透を促進している。これは著作権利者、利用者、NexToneの三者にメリットをもたらす構造になっており、NexToneの強みの一つだ。
こうしたことから、NexToneのシェアは引き続き拡大すると考えられる。
財務状況はどうだろうか。ROA(総資産利益率)は4.1%、ROE(自己資本利益率)は8.4%、自己資本比率は49.0%と大きな問題はなさそうである。また、無借金経営を続けていることは好印象だ。
ただし、予想PER(株価収益率)は105.1倍、PBR(株価純資産倍率)は10.6倍と、株価には過熱感がうかがえる。株価チャートを見てみると、上場時に1580円の値を付けてから大きく上昇し、8月26日には一時、上場来高値となる1万2600円の値がついた。
その後は緩やかな下落傾向にあり、11月下旬時点の株価は8000円弱。指標から割安感が感じられるわけではないが、NexToneが成長率を維持すれば実績が株価に追い付くのではないかと考え、11月25日に終値と同じ7750円で100株を購入することにした。
NexTone(7094)
年初来高値(2020年8月26日) 1万2600円
年初来安値(2020年3月30日) 1580円
株式取得時の株価(2020年11月25日) 7750円
取得株数 100株
【株式取引ルール】
月200万円を上限に最低1銘柄(企業)を選ぶ、バーチャル投資です。
投資対象は、新興市場を含む上場企業の現物取引です。
1年間のトータルで損益を競います。
「シューカツに使える企業分析バトル カブ大学対抗戦 Season2」を通じて、財務分析と意思決定の精度を少しでも向上させることができるように、頑張ります。