医療専門家「やってますよ感だけの政治的駆け引き」
菅首相と小池都知事の双方とも、尾身茂会長らの危機感とは遠く隔たっていたわけだが、12月11日に放送されたテレビの情報番組に出演した医療の専門家たちからは厳しい批判が相次いでいる。
日本テレビ系「スッキリ」では、日本感染症学会専門医の佐藤昭裕医師がこう指摘した。
「これだけ(感染者が)増えてしまったが、しっかり対策をとれば減らせる。GoToトラベルは、今は間違いなく、推奨するべきではありません」
テレビ朝日系「モーニングショー」では、厚生労働省の感染症対策助言組織「アドバイザリーボード」の釜萢敏(かまやち・さとし)委員(感染症専門医)が、
「GoToはもう一段抑制をかけていただきたい。データでは若い人の移動で感染が広がっており、65歳以上が動いて広がっているのではない」
と指摘。
武藤香織委員(東京大学医科学研究所教授)も、
「年末年始に相当おとなしく過ごしてもらわないと、年明け後、今より悪い医療体制になりそうだ」
と述べた。
日本医科大学の北村義浩特任教授は、
「これまでは専門家はマイルドに話していたが、今は対策が不十分だと言っている。最悪のシナリオは(コロナ以外の患者の)脳梗塞や心筋梗塞が診てもらえなくなる状況だ」
と危機感をあらわにした。
また、政府の分科会が「ステージ3」を「感染拡大継続」「感染高止まり」「感染減少」の3つに細分化する提言が出したことについて、北村特任教授は、
「ステージの分け方が破綻していることの表れだ。苦肉の策の手直し。ガラッと大幅に変えてもいいのではないか」
と指摘した。
日本テレビ系「ミヤネ屋」では、岩田健太郎・神戸大学大学院教授が、菅首相と小池都知事が「高齢者と基礎疾患を持つ人の自粛要請」でお茶を濁したことについて、こう痛烈に批判した。
「やってますよ感だけの政治的駆け引き、妥協です。感染を広げているのは20代から40代の若い人たちですから、科学的な感染拡大防止対策と真逆のやり方です。若い人たちの移動をまず抑えるのが先決です」
(福田和郎)