NTTドコモが2020年12月3日に発表した大幅な携帯電話料金値下げプラン「ahamo」(アハモ)が業界内に激震を走らせている。
9日、KDDI(au)とソフトバンクが主力ブランドから格安ブランドへの移行に伴う手数料を無料にすると発表。料金値下げへの「圧力」を強める菅義偉政権と、NTTドコモの挟み撃ちに屈した形だ。
また同日、KDDI(au)が満を持して発表した第5世代移動通信システム「5G」の新料金プランが、インターネット上で「期待外れ」「自爆か」と総スカンをくう事態となり、携帯料金値下げ戦争「冬の陣」が大混乱になっている。
総務省、公取委、消費者庁が合同で携帯大手に脅し
主要メディアの報道によると、携帯電話大手のKDDI(au)とソフトバンクは12月9日、主力ブランドから格安ブランド(サブブランド)に乗り換える際の高額な手数料を2021年2月以降、撤廃する方針を発表した。
総務省、公正取引委員会、消費者庁がこの日、同一事業者内での乗り換え手数料の撤廃や引き下げを検討する方針を示して、いわば「圧力」をかけたばかり。大手2社は政府の要請に応える形となった。
KDDIとソフトバンクがこれまで自社ブランド間の移行に伴う、現行の手数料(最大1万5500円。矢印の左)が、来春からはこうなる(価格は税別)。
(1)違約金9500円 → 来春から原則無料
(2)番号ポータビリティー(持ち運び制度)手数料3000円 → 来春から原則無料
(3)契約事務手数料3000円 → KDDIは原則無料。ソフトバンクは店舗で手続きした場合のみ3000円かかる。
KDDIとソフトバンクは今年10月末、菅政権の携帯料金値下げ要請を受け、格安ブランドで割安な新料金プランを発表したが、武田良太総務相は格安ブランドへの乗り換えの際に高額な手数料が生じることを問題視。「高いブランドへの囲い込みだ」と批判を強めていた。
そこに、NTTドコモが12月3日、本体ブランドの中に大幅な割安新料金プラン「ahamo」(アハモ)を発表したことが両社に衝撃を与えた。12月9日の記者会見の場で「ahamo」について聞かれたKDDIの東海林(しょうじ)崇副社長は、
「市場に対して一定のインパクトはある」
と認めざるを得なかった。
割安ブランドへの移行手数料の撤廃を拒否してきたKDDIとソフトバンクが折れた背景には、菅政権の省庁の垣根を超えた強硬な「圧力」がある。毎日新聞(12月10日付)「主力から格安へ移行無料 KDDI・ソフトバンク方針」が、こう伝える。
「武田良太総務相と、公正取引委員会や消費者庁を担当する井上信治・内閣府特命担当相は12月9日、携帯料金引き下げへの課題を解決するための『2大臣会合』を初めて開催。同一事業者内での乗り換え手数料の撤廃も検討し、3省庁が連携して年内にも改善策を打ち出すとしていた。会合後、武田氏は『関係省庁の力を結集して障害を取り除いていく。市場競争が働いた結果、料金の低廉化につながる』と強調した」