経済成長は必要に決まっている
ゼロ成長路線で社会を維持していくのは、現実的には不可能だ。経済成長のカギを握るのは人口と生産性の二つだ。日本はどちらにもうまく対処できていない。
日本は先進国の中でもっとも生産性が停滞している国である。その主たる原因はダラダラ残業にあることは明らかで、政府も「働き方改革」を唱えるようになった。
もう一つの理由は、社会のデジタル化が進んでいないことだ。現在の世界のトップ企業は、GAFAやその同類の新しいサービス産業が大半を占めている。高学歴でダイバーシティあふれる人たちが世界中から集まることで、新しい産業が生まれている。そのために、出口さんは大学を成長産業に位置づけることを唱えている。
投資はしたほうがいいか、貯蓄でいいか、という問題には、お金の運用についての大原則である「72のルール」を紹介して答えている。
「72年÷金利(%)」が、元金が2倍になる年数の目安となる法則だ。現在の銀行の普通預金の金利はだいたい0.001%だ。このルールで計算すると、7万2000年かかる。出口さんが社会人になった頃の社内預金の金利は11%だったから、6年半で元金は2倍になったことを考えると、金利が低い現在、貯蓄では意味がないことがわかる。
一般人がお金をふやすには毎月一定額の投資信託を買う「ドルコスト平均法」を紹介しつつ、「投資か貯蓄か」ではなく、「将来や老後に対する不安を少しでも減らすにはどうしたらいいのか」と問いを立て直せばいいという。
その簡単で効果的な方法が「働くこと」だ。働けば何がしかの収入が得られ、確実にお金をふやせる。また体力の低下も防げる。もっとも効果的な「投資法」だと、書いている。