「論語」に着目した渋沢栄一
最終章で「日本資本主義の父」と言われる渋沢栄一の功績を讃えている。最初、尊王攘夷思想にかぶれていた渋沢は一橋家の家臣になり、随行員としてパリに渡り、本物の資本主義に出会う。
維新後しばらく新政府の役人として日本経済の基礎を固める仕事をしたが、退職して実業家になることを決意する。この時、同僚は「卑しい金銭に目がくらみ商人になるとは」と反対したという。
「商売は悪事」という偏見をもたらしているのは朱子学だ。渋沢は「論語と算盤」という本を出した。朱子学は儒教の一派で、開祖である孔子の説を発展させたものだ。孔子の言行録である「論語」には「商売のすすめ」とも受け取れる言葉がたくさんある。これなら元武士たちも抵抗なく受け入れるだろうという「天才的発想」だと井沢さんは考える。
渋沢のおかげで、日本は健全な資本主義の道を歩むことができた。これに対し、「倫理なき資本主義」が、現代中国の姿だと、井沢さんは見ている。
井沢さんには、「逆説の日本史」シリーズ(小学館)などの著書がある。本書は「夕刊フジ」の連載を単行本化した。
「お金の日本史 和同開珎から渋沢栄一まで」
井沢元彦著
KADOKAWA
1700円(税別)