テレワークの善し悪し 大企業と中小企業のコミュニケーションの違いとは?(大関暁夫)

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社長がオンラインで参加する会議

   そして、判を押したように彼らが口にしたのが、「オンラインは確かに便利だが、リアル対面でのコミュニケーションが減ることのマイナス面は意識する必要がある」ということでした。

   その理由を、とある中小企業の社長が象徴的な言葉で表現してくれました。それは、

「システマティックに動く大企業ならいいかもしれないが、我々中堅・中小企業は社長と社員、社員同士の人と人との人肌のつながりがあって、はじめて組織や運営が成り立つのだと思う。オンライン中心の業務では、その人肌感は補えないと感じた」

というものでした。

   この言葉に、10年ほど前に同じような表現を聞いたことを思い出しました。中国に製造拠点を持っている中堅IT機器メーカーの役員を務めたときの話です。ある時、原則月1回開催の経営会議が経営環境の激変を受けて、月2回開催に変更になりました。

   この会議は通常、同社のT社長以下全役員が顔を突き合わせ、本社で行われていたのですが、月2回の開催になり、社長が中国出張の折には現地工場の会議室から、当時の最新鋭オンラインシステムで参加することになったのです。画質も音声も問題なく、社長出張時には、社長の顔が大写しになったディスプレイを社長の席に置いて会議が進められることになりました。

   何回か中国とオンラインで結んでの開催をした後、T社長が本社で会議に出席した折に役員の一人が、「やはり社長とは、こうして同じ会議室で顔を突き合わせて議論ができる方がいいですね」と言ったのです。すると社長は、その言葉に促されるように「まったくだ。今後私が中国に出張中は、会議は開催しないことにしょう」と宣言したのです。出席者一同、社長がオンライン参加する会議にどことなく違和感をもっていたのでしょう、社長の申し出にひとつの異論もなく、オンライン併用会議はあっけなく廃止されました。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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